2013年12月2日月曜日

論:種間関係の多様性と生態学的群衆の安定性




Diversity of interaction types and ecological community stability
Mougi, A. and Kondoh, M.  (2012) Science 337, 349-351




 異なる群衆間の関係(ここではantagonistic or mutualistic)が群衆の安定性に与える影響を理論的に検証。群衆の動態はHolling type I or II、ネットワーク構造はcascade or bipartiteで記述。全相互関係数における相利関係数の割合の変化に対する群衆の安定性の応答をシミュレーションし、異なる関係性が混ざり合ったハイブリッドな状態が群衆の安定性を最も高くすることを示す。



メモ:
 ライフサイエンス新着論文レビューにて日本語で同論文が紹介されているため、英語の苦手な学生はこちら参考にしながら読まれたし。



2013年11月28日木曜日

四方山:Gefährlich leben!


Niemand lernt, Niemand strebt danach, Niemand lehrt – die Einsamkeit ertragen.


Man muß noch Chaos in sich haben, um einen tanzenden Stern gebären zu können.


What is the seal of liberation? — No longer being ashamed in front of oneself.


Hat man sein warum? des Lebens, so verträgt man sich fast mit jedem wie?


Was mich nicht umbringt, macht mich stärker.


Du sollst der werden, der du bist.


There is in the world only one way, on which nobody can go,
except you.


- Friedrich Wilhelm Nietzsche




ドイツ語での出典がわからなかった言葉は英語表記。

論:DIRBによる鉄酸化物の還元に対するFe2+吸着阻害の実験的検証




Effect of sorbed Fe(II) on the initial reduction kinetics of 6-line ferrihydrite and amorphous ferric phosphate by Shewanella putrefaciens
Hyacinthe, C., Bonneville, S., and Van Cappellen, P.  (2008) Geomicrob. J., 25, 181-192




 Fe2+によるFe(III)還元阻害の影響を調べるために、鉄酸化物(6-line ferrihydriteとアモルファスのリン酸化鉄(以下FeP))と還元細菌のS. putrefaciensに対して事前にFe2+の吸着を行い、短時間の還元実験における還元速度をコントロール(吸着無し)と比較。

 還元速度にはほとんど違いが見られなかったことを報告。ただし、FePにおけるFe2+の吸着量がFePの表面サイトの最大吸着量に達する程度であった場合には還元速度がやや減少。この結果から筆者らはFe2+によるFe(III)還元の阻害は鉱物表面の吸着サイト全て、もしくは細菌の金属吸着サイトが全てFe2+で飽和した時のみ生じるのではないかと提唱。



メモ:
 Liu et al. (2001) ES&TでS. putrefaciens strain CN32に対する同様の吸着実験が行われており、そちらではFe2+吸着によって還元速度への影響が報告されている(Fe2+濃度上昇が生じるまでに時間遅れが生じる)。LiuらはHyacintheらより1オーダー高い濃度のFe2+で24時間をかけて細胞に対する吸着を行う(Hyacintheらは2時間)。LiuらはFe(III)-citrate錯体を電子受容体として利用。



2013年11月24日日曜日

本:差別語からはいる言語学入門


週末はいのちのおせんたく日和だったので、電車に乗ってぷらっとお散歩していました。
車内にて

差別語からはいる言語学入門 田中克彦著 ちくま学芸文庫

を読了。大変興味深く読みました。以下感想。

 著者は「差別語は使うべきではないが、単に臭いものに蓋をするように無視したり削除したりするのではなく、何故その言葉が差別語であるのかを考えることが必要ではないか」という立場で、いくつかの差別語に関する考察を紹介しています。差別語をなくすためにどうしたら良いか?という回答を得たいという方にはお薦めできません。この本では差別語は言語学的な研究対象であり、その善悪が問われているわけではありません。つまりは差別語に関する実践的な対応の仕方を目的として書かれた本ではなく、差別語の学術的な興味が綴られています。

 ...とここまで前置きをして、むしろ後者に興味を持たれる方には是非お薦めです。差別語に関する新たな視点・洞察を得ることができるのではないかと思います。例えば、著書の最初の方で、「差別語の糾弾は初めて非エリートがエリート階級から言葉を奪取しようとした動きであった」との考察が紹介されているのですが、これはわたしにとっては大変新鮮で、差別語について新たな観点を得るものでした。素人意見で恐縮ですが、「生きた」言葉を扱う言語学は、生物学的であるなぁと感じつつ読み進めました。まずどちらも進化するものを対象とし、時にその過去の復元が難しい点。そして要素に還元しても言葉も生物もその機能としての意味をなさない点。

 以下は著書で最も好きな一文です。

 たいせつなことは、すこしでも、自分が十分なっとくのいかない説明や主張があったばあいには、なぜ、しっくりと理解できないかとよく考えてみることである。(143ページより抜粋)

 非道徳的である、倫理的でない、人が傷つくからやめろ、というのは、真っ当ですが、その意味を理解しない人を納得させられる言葉ではありません。わたしは異なるイデオロギーの人々を説き伏せることができる言葉が欲しい。

 また、著書の本筋とはずれますが、下記の一節に深く共感しました。

...人間は何か変わらないもの、変えようと思っても変えられないものを、アイデンティティなどといって、異常に重んじるという保守的な性質をもっている。アイデンティティほど、人間を不動のものにしばりつけて、精神の苦しみを与えるものは他にないのにである。(68ページ目より抜粋)

 知らぬ存ぜぬで自由になりたいことがたくさんあるのですが、人生、なかなか儘なりません。それでもできる限り自由になれたら!



それにしても紅葉綺麗でした。


2013年11月22日金曜日

研:セミナーの案内

*** セミナー時間が変更になりました! ***

東大農学生命科学研究科土壌圏科学研究室の黒岩恵さんが11月25日(月)に共同研究打ち合わせで訪れてくれることとなり、折角なのでセミナーの依頼をしたところ快諾してくださいました。

インフォーマルなセミナーです、急なアナウンスとなりましたが、ご関心のあります方は是非お越しください。また、夜は近鉄奈良駅近くで懇親会を行う予定ですので、ご都合のよろしい方はどうぞご参加ください。

講演タイトル:「生態系機能とプレイヤーはつながるか」
講演者:黒岩恵 (東大農学生命科学研究科土壌圏科学研究室 D2)
日時:11月25日(月)10時〜 13時〜
場所:奈良女子大G棟303室

要旨:
 森林の生産性は一般に窒素の供給によって制限されてい ると考えられており、植物や微生物にとって主な窒素源で ある無機態窒素(アンモニウム(NH4+)および硝酸(NO3−))の 生成や消費プロセスは特に重要である。植物や微生物は一般的に土壌中で無機化によって生成する NH4+および硝化 によって生成する NO3−を利用する(図 1)。その一方で生成 した NO3−は容易に水系へと流出し、またガス態窒素へと還 元(脱窒)される (図 1;青矢印)。多量の NO3−の流出は水系の富栄養化を、また脱窒過程で放出される亜酸化窒素(N2O) や一酸化窒素(NO)は温暖化やオゾン層破壊、光化学オキシ ダント生成を引き起こす。したがってこれらの問題の低減と、健全な森林生態系の維持・ 管理のために、硝化はキーとなるプロセスであり、どのような要因によって制御されてい るのかを明らかにする必要がある(図 1)。しかし、硝化や他の窒素循環プロセスを含む土壌 中の物質変換や移動プロセスは地理的条件(気候・植生など)や地質的条件に強く影響され、 硝化の制御要因を一般化することは難しい。さらに、硝化は微生物による代謝反応であり、 硝化の制御メカニズムを明らかにする上で活性を担う微生物の生理特性を考慮する必要が ある。しかし森林土壌において、どの微生物群が硝化活性を担っているかはいまだ不明瞭 である。具体的には、硝化の第一段階である NH4+酸化は、これまで主に独立栄養性アンモ ニア酸化細菌(AOB)によって駆動されると考えられてきたが、これに加えて特に酸性森林土 壌では従属栄養細菌・糸状菌(Schimel et al. 1984 AEM)や近年発見されたアンモニア酸化 古細菌(AOA)の関与が示唆されている( Leininger et al. 2006, Nature)。また、これらの微 生物が窒素循環速度をどのように制御しているかについてはほとんど未解明であるのが現 状である。
 本発表では生態系における窒素フロー測定の背景と現状、またこのような生態系の「機 能」と「プレイヤー」の関係性をどのように検証していけば良いのかについて、近年の事 例をとりあげながら、物質循環および微生物生態学の視点から考察する。


2013年11月21日木曜日

研: phreeqc初心者のおべんきょう(1)

Fe2+のFe(III) oxideへの吸着を計算しなくてはいけないことになって、共同研究者から

「PHREEQCやMINTEQLなら異なるpH条件で様々なFe(III) oxideに対するFe2+の吸着量を計算できるから便利だよ」

と助言を受け、なるほどそうか、じゃあ良く聞くPHREEQC(ちなみに読み方はフリクシー、かわいい)を使ってみるか…と思い立ち、とりあえず覚えたことをメモ。
間違いなど教えていただけると嬉しいです。


1. とりあえずこちらからMacOS(Intel) batch versionをダウンロード


2. dmgをマウントするとphreeqc-2.x(わたしがダウンロードしたバージョンはphreeqc-2.18.3)フォルダがあるので、すきなところに保存


3. phreeqc-2.x直下のアップルスクリプトもしくはbin/phreeqcよりターミナルで起動。以下ターミナルでの利用。binにパスを通す。


4. とりあえずテスト。作業用フォルダを好きなところに作成して、作業用フォルダにphreeqc-2.x/examplesからex1とdatabaseからphreeqc.datをコピペ、作業用フォルダに移動後ターミナルよりphreeqcで起動

Name of input file?
ex1
Input file: ex1

Name of output file?
Default: ex1.out

Output file: ex1.out

Name of database file?
Default: phreeqc.dat

Database file: phreeqc.dat

と、ダイアログに沿って入力すると、ex1.outに結果が出力される。

ex1は海水中のUのスペシエーションの例で、まだ完全に理解していないですが


SOLUTION 1  SEAWATER FROM NORDSTROM ET AL. (1979)
# 以下は濃度などの設定
        units   ppm
        pH      8.22
        pe      8.451
        density 1.023
        temp    25.0
        redox   O(0)/O(-2)
        Ca              412.3
        Mg              1291.8
        Na              10768.0
        K               399.1
        Fe              0.002
        Mn              0.0002  pe
        Si              4.28
        Cl              19353.0
        Alkalinity      141.682 as HCO3
        S(6)            2712.0
        N(5)            0.29    gfw   62.0
        N(-3)           0.03    as    NH4
        U               3.3     ppb   N(5)/N(-3)
        O(0)            1.0     O2(g) -0.7
# ここまで濃度などの設定

# SOLUTION_MASTER_SPECIES: 元素名、主要な種の荷電状態を含む化学式、アルカリ度への寄与、化学式のグラム重量、元素のグラム重量

SOLUTION_MASTER_SPECIES
        U       U+4     0.0     238.0290     238.0290
        U(4)    U+4     0.0     238.0290
        U(5)    UO2+    0.0     238.0290
        U(6)    UO2+2   0.0     238.0290

# SOLUTION_SPECIES: 会合反応の反応式、平衡定数をlog_k、25度のときの反応エンタルピーをdelta_hで与える

SOLUTION_SPECIES
        #primary master species for U
        #is also secondary master species for U(4)
        U+4 = U+4
                log_k          0.0
        U+4 + 4 H2O = U(OH)4 + 4 H+
                log_k          -8.538
                delta_h        24.760 kcal
        U+4 + 5 H2O = U(OH)5- + 5 H+
                log_k          -13.147
                delta_h        27.580 kcal
        #secondary master species for U(5)
        U+4 + 2 H2O = UO2+ + 4 H+ + e-
                log_k          -6.432
                delta_h        31.130 kcal
        #secondary master species for U(6)
        U+4 + 2 H2O = UO2+2 + 4 H+ + 2 e-
                log_k          -9.217
                delta_h        34.430 kcal
        UO2+2 + H2O = UO2OH+ + H+
                log_k          -5.782
                delta_h        11.015 kcal
        2UO2+2 + 2H2O = (UO2)2(OH)2+2 + 2H+
                log_k          -5.626
                delta_h        -36.04 kcal
        3UO2+2 + 5H2O = (UO2)3(OH)5+ + 5H+
                log_k          -15.641
                delta_h        -44.27 kcal
        UO2+2 + CO3-2 = UO2CO3
                log_k          10.064
                delta_h        0.84 kcal
        UO2+2 + 2CO3-2 = UO2(CO3)2-2
                log_k          16.977
                delta_h        3.48 kcal
        UO2+2 + 3CO3-2 = UO2(CO3)3-4
                log_k          21.397
                delta_h        -8.78 kcal

# PHASES: 解離反応の化学式、平衡定数をlog_k、25度のときの反応エンタルピーをdelta_hで与える

PHASES
        Uraninite
        UO2 + 4 H+ = U+4 + 2 H2O
        log_k          -3.490
        delta_h        -18.630 kcal
END



Uの反応などはデータベース(phreeqc.dat)に含まれていないので、追加している。

あれ…これはもしや、attachment constantとかは自分で入力しなければいけないのだろうか…?それならパラメータがあれば自分でプログラム組む方が速いような...

とりあえず、ぼちぼちと試してみます。


2013年11月17日日曜日

本:思考の整理学

先週「つん読」していた本を読み終わったので、昨日は新しい書籍を購入しに大阪のジュンク堂へ。

数冊を補充し、昨日は

思考の整理学 外山滋比古著 ちくま文庫

を読了。東大・京大で5年間販売冊数第1位という帯に惹かれました。

しまった、これはもっと早く読んでおくべきだった。
そして大学生の皆さん、特にこれから卒論を書くことになる皆さん、是非読んでください。
この本には、卒論を書くとはどういうことか、卒論を書くためにどうすべきかの示唆がふんだんにちりばめられています。

以下わたしの心に止まったことを箇条書きにて

1 グライダーにエンジンを持たせる教育とは?
2 快活な頭の状態を意識的に作る(忘却することの大事さを含む)
3 1つのアイディアにとらわれすぎないこと
4 整理する、寝かせる、書く、話す
5 創造の芽を育てる

2-4は近年その重要性を痛感しており、自分なりに気をつけていたけれど、1と5は未だ難しく。

わたしの場合、4の「整理」のためのアイディアメモにはWunderlistを利用しており、「寝かせる・書く」のためには研究用雑記ノートと研究テーマ(プロジェクト)に特化したノートを作成、結果のまとめはLaTeXか場合によってはWordで、「話す」は近くに研究の話ができる方が少ないため(ぐすん)メールとEvernoteで行うことが多いです。

ノートに書くことが未だに好きなのは、「考える」「寝かせる」が一緒にできるからなのではないかと思う次第。

そういう理由から、わたしは講義中に板書を撮影することは不可としています。
何が大事か考えながら、自分なりにまとめてメモをすることのほうが重要ですよ。

2013年11月11日月曜日

四方山:清須会議


下田の出張が延期になったので(Iさんとそのご家族が早く元気になりますように!)、昨日は来週日曜日の女子中高生のための関西科学塾の講義資料の作成。中高生の皆さんを対象に二酸化炭素濃度上昇に伴う海洋酸性化のシミュレーションをします!




今日は放射性物質関連のお仕事を再開。そして久々に定時に大学を出て、清須会議を観てきてしまいました。今回は三谷さんがメガホンを取る初の時代物、さらには豪華な顔ぶれが出演とのことで楽しみにしていました。実際に楽しめました。三谷さんの作品はいつも人物間の駆け引きが絶妙ですが、今回も健在。役者の皆様も本当に素晴らしかったですが、個人的に小日向文世さん演じる丹羽長秀が一番素敵でした...!

三谷さんの映画作品に連なるテーマとして夢と挫折、仕事と責任が描かれているように感じており、活力をいただいております。

2013年11月8日金曜日

四方山:下田に出張してきます


昨日は鉄還元細菌による鉄還元動態のモデルのアイディアをまとめ、簡単なシミュレーション結果も添えて共同研究者に送るところまでなんとか終了(今週の目標にしていたので良かった良かった)。

忙しいときもすぐに返事をくれる人で、いつもポジティブなコメントをくれるのが嬉しい(今回の場合はvery nice!でした)。自分もそうありたいと思います...いや、思っているだけではいかんですね、そうせねば。

週末から火曜日まで共同研究の打ち合わせで筑波大学下田臨海実験センターに滞在してきます。ついにマンガン、ヒ素に関わる研究にも乗り出せるか?!(MnはCe anomalyの研究の時に少しだけ関わったけれど)あと、DOC関連のことも話し合えたらな...楽しみ!

2013年11月5日火曜日

四方山:今日は臨時休業日でした


...ということに大学に着いてから気がつきました。
学園祭中はサイエンスオープンラボにたくさんの皆様にお越しいただき、誠に有り難うございました!
情報科学科の催しへの来場者数は計679名でした。

今日はひたすら鉄還元細菌についての論文を読んでおりました。Fe(II)による還元の阻害とか、electron shuttle(日本語でなんと訳すのかしら?)とか、どう考えるべきかな...!

そして16時半からは高知大学の加藤元海さんによるセミナー、その後懇親会でした。

2013年11月4日月曜日

MathematicaでのStepwise変数選択(変数減少法のみ)

MathematicaでStepwise変数選択(変数減少法のみ)のプログラム作成してみました。
改良などご助言ありましたらご連絡いただけると嬉しいです。
AICやBICなどによる選択法のプログラムも作ったのですが、また次回にでも。

(* テスト用のデータ作成 *)

tmp = {RandomReal[{0, 20}, 40], RandomReal[{0, 20}, 40] , RandomReal[{0, 20}, 40],
   Table[0.5*x + RandomVariate[NormalDistribution[0, 1]], {x, 1, 40, 1}],  Table[1*x + RandomVariate[NormalDistribution[0, 1]], {x, 1, 40, 1}]};
data = {"x1", "x2", "x3", "x4", "y"};
data = Join[{data}, Transpose[tmp]];
data // TableForm


(* dataの最後のリストを従属変数として、他の変数を独立変数として重回帰し、結果をreslistに保存。推定されたパラメタに対するt検定のp値が全てcritを下回ったら終了(誤差項は除いています)。そうでなければ最大のp値が返されたパラメタを持つ独立変数を除き再度重回帰。独立変数の数が0になったら変数選択を終了。*)

crit = 0.2;
label = data[[1]];
df = Transpose[Drop[data, {1}]];
xlist = Table[Subscript[x, i] , {i, 1, Length[df] - 1}];
reslist = {}; tmplist = {};
While[Length[df] > 1,
 {
  data = Transpose[df];
  lm = LinearModelFit[data, xlist, xlist];
  AppendTo[reslist, lm];
  tmp = Drop[lm["ParameterTable"][[1]][[1]][[All, 5]], 2];
  AppendTo[tmplist, tmp];
  Print[label];
  If[Length[Select[tmp, # > crit &]] == 0, Break[]];
  remove = 1; maxP = -1;
  For[i = 1, i <= Length[tmp], i++,
   If[tmp[[i]] > maxP, {remove = i, maxP = tmp[[i]]}]];
  df = Delete[df, {remove}];
  label = Delete[label, {remove}];
  xlist = Delete[xlist, {remove}];
  }
 ]



(* ベストモデルの抽出 *)

Normal[Last[reslist]]
Last[reslist]["ParameterTable"]



2013年11月3日日曜日

論:微生物群衆の情報は窒素循環を知るためには役に立たない?




Do we need to understand microbial communities to predict ecosystem function? A comparison of statistical models of nitrogen cycling processes
Graham et al. (2014) Soil Biol. Biochem., 68, 279-282




微生物群衆の遺伝子存在量データを含む土壌多変量データに対して、硝化速度やN2Oフラックスを従属変数としてステップワイズ変数選択、重回帰分析を用い、微生物群衆データがない方がモデルの説明力が高いことを示した論文。

それで微生物群衆データの情報が窒素循環を知るためには有益でないとするのはちと乱暴すぎるのでは?
まず線形和だけで従属変数を説明できるとする考え方は仮定に過ぎないので、その仮定に基づいたら微生物群衆データ情報は役に立たないという結論になった、というだけの話だと思うのです。
非線形関係を考慮したらどうなるのか?という議論も必要。

統計モデルはプロセスを駆動するメカニズムを知るための指標を提示するものであって、統計モデルを構築することでメカニズムを理解することにはならないと考えます。



2013年11月1日金曜日

大学:明日から学園祭、情報科サイエンスオープンラボは2日と3日開催です。

明日から奈良女子大学第62回恋都祭が開催です。

理学部情報科学科では今年もサイエンスオープンラボにて展示を行います。

今年は「おいでよバーチャルの森!」というテーマで、AR (Augmented reality: 拡張現実) や Kinectの技術を体験できる展示と、プログラミング体験講座が開催されます。

情報科の展示は2日と3日になります。お時間がありましたら是非お越しください!

2013年10月31日木曜日

研:論文が受理されました

Geomicrobiology Journalに論文が受理されました!
タイトルは"The Gibbs free energy threshold for the invasion of a microbial population under kinetic constraints"です。

環境中における化学合成細菌の存在は、その細菌が代謝を依存する酸化還元反応の反応ギブス自由エネルギーによって予測されてきました。この予測は、酸化還元反応の負の反応ギブス自由エネルギー(-ΔrG)は細菌が得うるエネルギー量であるとの仮定に基づいており、-ΔrGの値が細胞を維持するのに必要なエネルギー量を上回る時に細菌は環境中に存在可能であると考えられています。しかしながら、細菌の得られるエネルギー量は細菌がどれくらい酸化還元反応を触媒できるか、つまりは電子供与体や受容体の量に依存しています。このため、細菌の触媒速度が利用可能な電子供与体や受容体の量によって制限されるときの細菌のエネルギー収量は-ΔrGで予測されるエネルギー量よりも低い可能性があります。

本研究ではある酸化還元反応に代謝を依存する化学合成細菌が増殖可能なΔrGを、反応速度論と熱力学的エネルギーに基づいて計算される細菌の増殖率から推定しました。細菌がある系に侵入した際に増殖率が0以上になる条件をグラフを用いて視覚的に調べる方法と、モンテカルロシミュレーションによって調べる方法を提案しています。また、この方法を鉄酸化細菌個体群に適用し、鉄酸化細菌個体群が系に侵入可能であるΔrGを数値的に計算した例を紹介しています。


この論文は私が単著で執筆したものですが、様々な方との議論を経て完成致しました。特に査読者のうちの1人からは本当に丁寧なコメントをいただきました(コメントに論文リストつき!)。理論系ではない雑誌にこの論文が掲載されることとなり、大変嬉しく感じております。Geomicrobiologistsとどんどん繋がっていけるとよいなぁ。目に見えない小さなもの達が地球の物質循環を駆動するエンジン!(Falkowski et al. (2008) Scienceのタイトルより)本当に面白い!!

2013年7月25日木曜日

研:お久しぶり

お久しぶりの更新です。定期的に更新を続けるはずが、仕事が忙しくなるとなかなか難しいです...

抱えていた仕事が3つほど一段落して(1つは論文の再投稿。とっても思い入れがある論文なので是非通ってほしい!)、窒素循環関連の共同研究に着手しはじめました。
モデル化と統計解析がメインになる仕事ですが、どう攻め込んでいくか、いただいたデータとにらめっこな一日。

真面目にデータと向き合って、物理化学的な作用と微生物学的な作用をモデル化したい。ゆくゆくはフラックスの時間動態モデルにできれば良いけれど、まずはどんな環境因子がどんな関数形で窒素動態に影響しているのかを考えて、地道に検証していくことが必要かな、と思います。

まずは2変数に帰れ。といったところでしょうか。

ああ、鉄酸化細菌の鉄酸化動態モデルの回帰分析もやらなければ。にわかに統計のお仕事が増えてまいりました。欲しいデータを提供してくださる共同研究者がいるのは有り難いです。

でも、ほんとうは自分で培養がやりた〜い!

2013年6月20日木曜日

研: 研究室分属決定までの日程

先ほど情報科事務より連絡がありましたが、研究室分属決定までの日程をコピペしておきます。


■ 6月24日(月)
 研究室配属資料を学科掲示板と学科ウェブに掲示
 研究室単位の説明会開催の場合、詳細は後日掲示

■ 7月3日(水) 13:00〜  G302にて
 全体説明会

■ 7月8日(月)12:00
 分属希望締め切り(分属希望届けを学科事務へ提出)

■ 7月10日(水)12:00
 教員は受け入れの可否を決定、午後に発表。

■ 7月16日(火) 12:00
 二次分属希望締め切り

■ 7月17日(水)
 配属の決定(最終)  



これに加えて

■ 7月1日(月) 14:40〜 G303にて
 数理生物学グループ研究室合同説明会 

があります。我々のグループに興味がある学生は是非参加してください。


また、掲示板に貼りだしてある瀬戸研分属資料に書きましたが、瀬戸研に興味がある学生は全体説明会の前日までに必ずわたしの居室G310まで話を聞きに来てください。


どの学生にも勧めていますが、たくさんの先生や先輩の話を聞いて回って、自分の打ち込めそうな研究ができる研究室を探しましょう!

卒業後に就職するのならば一生に一度の論文執筆になるわけですよ!没頭できなくてどうする!

2013年6月12日水曜日

研:初夏のパンケーキ祭り


更新をサボっておりました。帰国後いろいろなお仕事(カナダの仕事の論文書き、投稿中の論文のrevision、共同研究、その他もろもろ)で楽しくやっておりました。

研究は趣味です、と、お師匠様がおっしゃっていたのを思い出します。

もうだいぶ前になりますが、UWを去るときに餞別にとメープルシロップをいただいたので、研究室のメンバー(数理生物学グループ)とSOLメンバーとで初夏のパンケーキ祭りをしました。(某メーカーの催しを摸し、命名)

写真は研究室メンバーとのものです。学生の写真は問題もあるかもしれないので、私の写真だけですが、


これは学生が作ってくれましたよ!



2013年4月28日日曜日

四方山:近況報告&(indoor) rock climbing

ここのところとてつもなく仕事に没頭していたので全く更新をしておりませんでした。

こちらに来てから3週間が経ちました。元気に研究しております。今日は体調と脳の働きに限界を感じたので休養することにしました。

今週はバクテリアと鉄循環に関する研究プロジェクトについてbrainstormingがあり、モデル検証のための実験系について心躍るような提案がありました。
実験実施のために必要な費用はだいたい300万円前後とのことなので、獲るぜ!研究資金!

今は3週間分の成果についてまとめていたところです。こちらに来てから本当に仕事がはかどっています。こちらの研究者達はとてもオープンで、議論の時間を積極的に作ってくれます。モデルに必要なパラメタやデータの助言、実際の現象についての鋭い洞察を得ることができ、自分だけで完成させようと思うと1ヶ月以上かかるであろう仕事が1週間で終わります。驚きです。

様々な分野の研究者と共同で仕事を行うことがこんなにも効率的で、エキサイティングで、創造的だとは。こちらでの滞在を可能にしてくれた全ての方々に大変感謝しております。


ほとんど家と大学の行き来で毎日終了ですが、ラボのメンバーとの研究以外での交流も楽しんでいます。

昨日は仕事上がりにロッククライミングのジムに行ってきましたよ!




わたしは高いところが苦手なので、初め自殺行為かと思いましたが、ザイルで安全が確保されているので、安心して楽しむことができました。

今日は午後からラボのメンバーとSt. Jcobs farmers marketに行ってきます。
こちらのマーケットに行くのは初めてです。野外マーケットだそうで、今日は天気も良いので楽しみです。

Farmers marketは野菜、果物、畜産物の他、パンや軽食なんかも売っています。
普通のスーパーマーケットで購入するよりも大変安いので助かっています。

2013年4月17日水曜日

四方山: 一言

若いうちの投資(勉強、運動、良い遊び)は、たくさんしておくに限るよ。
年をとってどうしてもやりたいものが見つかった時に、自分の能力が足りなくて手が届かないのは悔しいでしょ?
20代の内に全力で生き急ぐようにするのも悪くないです。

さて、今からUWに行ってお仕事!

2013年4月13日土曜日

四方山: UW滞在一週間経過

UW (University of Waterloo) で研究活動を開始し、あっという間に一週間経過してしまいました。

昨日は午前中にセミナー発表の時間をいただき、Energetic model & Iron reducing-bacteriaの研究をされている方と議論。わたしは今 Fe oxidation kineticsのモデリングをしているので、是非2つをカップリングして、滞在中にFe cycle modelを完成させたいです。

他にも面白そうな研究の種が見つかって、同時進行で研究を進めて行きたいと思っているのですが、時間がなんぼあっても足りないなぁ〜。

一ヶ月半なんてあっという間なんだろうなぁ。

そうそう、昨日の出勤時は地面が凍結していて滑って大変でした。Freezing rain (日本語で何て言うのかしら?) が降ったので、地表の全てが氷で覆われてしまっていました



今日はKitchenerで迎える土曜日です。とりあえず掃除を完了。そして今日こそ食料品の買い出しに行かねば。冷蔵庫の中身がすっからかんです。

土曜日の午前中にFarmer's Marketが開かれていると教えてもらったので、これから出かけようと思っています。今日も寒そう〜。

午後は大学関連のあれこれと、申請書書きなどをして過ごす予定。
天気が良ければ公園でも散歩したいと思っていたのですが、あいにくの曇り空です。


2013年4月11日木曜日

四方山: Waterloo滞在3日目

夕飯を食べてちょっと休憩。いつもこの時間が魔の時間帯で、もの凄い睡魔に襲われます。日本時間の夜時間って訳でもないのに、どうしてかしら?

まだ3日しか経っていないという事実に驚愕するくらい毎日濃厚〜〜〜〜〜な研究生活を送っております。

今日はひたすら非線形モデルのパラメタリゼーションとgoodness of fitの評価。
あまり好きではない作業のはずだったのに、はかどるし楽しい。実験やデータについて分からないところがあったときにすぐ質問できる環境って本当に素晴らしい。
この3日で3年分の深刻な地化(地球化学)成分不足を補充した感じです。

フィッティングはMathematicaでやっていますが、Moduleをうまく使うと連立微分方程式なんかでもNonlinearModelFitができることを今日初めて知りました。便利!
まあ、非線形がそこかしこに現れている場合にはどうにもならないですが。。

この作業が終わったらモデルの基礎部分がだいたい完成するので、早く次のステップに移るためにも頑張るぞー!

そういや明日は雪が降るらしいです。日本で桜を愛でていたのが嘘のよう。
買い物に行きたかったけれど、あんまり寒いとへこたれそう。

円安にシフトしてきているせいかもしれないですが、カナダは思っていたより物価が高かったです。日本にいたときよりまじめに自炊して節約しています。
というか、コンビニとか無いから自分で作るしかなかったりして。

2013年4月9日火曜日

四方山: University of Waterloo 初日

今日はUniversity of Waterlooでの共同研究の初日でした。

滞在先の教授とは約半年ぶりくらいの再会になりましたが、歓迎していただいて嬉しい限りでした。

午前中に今後の共同研究に話し合いの時間をいただき、午後は諸手続など終えてから仕事に着手。色々スムーズに手配していただいて、初日から仕事が出来る環境が整えられてとっっっても幸せです。

酸化還元と微生物のうんぬんなモデル(研究が進捗したらまたお話しします)について実験の方々との共同研究が実現しそうで、アドレナリンが出っぱなしです。



滞在中のアカウントもいただき、電子ジャーナルにもアクセスできるようにしていただきました。待望のGeomicrobiology Journalが読み放題(?)です、いやっほう!!


滞在先はEcohydrology Research Groupというところですが、同グループ内で実験も理論研究も行われています。実験室内で土壌の酸化還元層を再現して自動的にデータを取る装置(pH, Eh, 各化学種濃度など)なんて初めてみました。なんという理想郷。

ところでこちらは現在5時30分、昨日19時頃に夕飯を食べたら猛烈な眠気に襲われ、3時間ほど仮眠を取ったら眠れなくなって仕事しつつ今に至ります。
東方角への移動の時の時差にはいつも悩まされます。。


早朝大学構内を散歩していたときの写真数枚。




見えにくいのですが、リスがいたのでそーっと撮影。


2013年4月8日月曜日

四方山: 大学不在&Kitchener到着

4月8日から5月19日までカナダのUniversity of Waterlooで化学合成細菌(特に鉄酸化細菌)の研究をすることになっています。不在中はメールにてご連絡よろしくお願い致します。

7日に日本を出発して、ロサンゼルス経由でトロント着、そこからVIA Rail Canadaで8日の昼にようやく滞在先であるKitchenerに到着。

駅に到着後はバスの定期券を買いにCharls St terminalへ。1ヶ月券を購入。1週間に5日バスに乗車する場合30%お得だそうです。運営会社はGrand River Transit。例に漏れず土日はバスの本数が激減するので注意せねば。

スーパーマーケットは日曜日でも空いていました。これが普通なのかな。助かります。
# しかし宿泊先からは歩きで片道30分。。

Kitchenerはフランス語圏なのかと思ってびくびくしていましたが英語圏で安心しました。言語に関して質問してみたら、近郊の大都市ではOttawaではフランス語を話す方が多いそうですが、日常的に英語を話す人の方が多いみたいですね。

午後はこれからの研究計画をまとめたりしつつ過ごし、明日の朝に初登校(?)です。時差ボケがさっぱり取れないので、はやく順応できるといいです。

2013年3月19日火曜日

備忘: 参加を考えている学会備忘録



参加が確定している学会

Goldschmidt 2013
Dates: August 25-30, 2013
Venue: Florence, Italy
Abstract submission deadline: April 12, 2013

2013年度日本地球化学会第60回年会
時期: 平成25年9月11日(木)〜13日(金)
会場: つくば大学
講演要旨登録締切: 固有セッション...7月17日、共通セッション...6月23日

The 21st International Symposium on Environmental Biogeochemistry
Dates: October 13-18, 2013
Venue: Wuhan, China
Abstract submission deadline: May 30, 2013



参加を迷っている学会

The Society for Mathematical Biology Annual Meeting and Conference 2013
Dates: June 10-13, 2013
Venue: Arizona, USA
Abstract submission deadline: Contributed talks ... April 1, Posters ... April, 15



参加したいけれどできそうにない学会

2013年度日本数理生物学会年会
時期: 平成25年9月10日(水)〜13日(金)のいずれかの3日間
会場: 静岡大学



数理生物学会と日本地球化学会また丸かぶってしまった。。
残念ですが、しばらくは日本地球化学会を取ります。そういう意味でも、SMB2013に参加しておくほうが良さそうだなと考えているところです。

久々のGoldschmidt conferenceとISEBアジア開催、楽しみだなぁ〜〜〜っっっ!!!ISEBは今年は中国開催なので、日本からの参加が多いと良いですね!


2013年3月15日金曜日

論: 嫌気好中性鉄酸化細菌によるバイオミネラリゼーション



Iron biomineralization by anaerobic neutrophilic iron-oxidizing bacteria
Miot J. et al. (2009) Geochimic. Cosmochimic. Acta, 73, 696-711



概要

 嫌気性かつ好中性で、硝酸還元/鉄酸化をおこなうAcidovorax sp. strain BoFeN1を培養し、生成された鉄酸化物の特徴を走査型電子顕微鏡(STXM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて調べる。

 BoFeN1は3つの異なるタイプの鉄酸化物を沈殿することが観察された。それらは沈殿の形態・沈殿する場所によって特徴付けられる: (1) 細胞の周辺に直径約100 nmの鉄酸化物の球状体が繊維状に集合したタイプ。(2) 細胞表層を直径約100 nmの小球体として覆うタイプ。(3) ペリプラズム内に約40 nmの層として存在するタイプ。細胞内と細胞外の鉄酸化物はそれぞれ異なる有機分子と結合していることが観察された。細胞外の場合はexopolysaccharides (菌体外多糖)、細胞内の場合はタンパク質の一部であると見られた。時系列的な観測の結果、細胞での鉄の沈殿はまずアモルファス状のリン酸鉄としてペリプラズム内で生じ、その後コロイド状の鉄に富んだ小球体として細胞表層を覆った。また、細胞極において非対称な鉄酸化物の沈殿が生じていることが観察された。



 細胞付近にどのように鉄が存在しているのかを示すTEMとSTEMによる素敵写真が掲載されております。必見です。目で見るって大事ですよね、たくさんのイメージがわいてきます。使え、五感!モデルの研究の方でも面白い結果がではじめました。Mathematicaちゃんは可視化の面で役に立ってくれています。

 余談ですが、先に投稿していた論文、査読者が決まらないまま2ヶ月半放置されていたとかで。。長丁場な予感。



2013年3月13日水曜日

論: フミン質・有機コロイドが微生物学的鉄酸化/還元に与える影響



How does organic matter constrain the nature, size and availability of Fe nanoparticles for biological reduction?
Pédrot, M., Le Boudec, A., Davranche, M., Dia A., and Henin, A. D. (2011) J. Colloid Interface Sci., 359, 75-85



概要

 フミン質が存在することで鉄の酸化にどのような影響が現れるのか、また、生成された鉄酸化物のbioavailabilityにどのような影響が現れるかについて、培養実験によって検証。

 フミン質が存在しないときにはnano-lepidocrociteのマイクロスケールの塊が生成されたが、フミン質が存在する場合には鉄の粒子はナノスケールにとどまり、有機物中に分布していた。また、二価もしくは三価の鉄がフミン質と錯生成していることが観察された。異化的鉄還元細菌(Shewanella putrefaciens)を用いて、有機物コロイドと結びついているナノスケールの鉄粒子と純粋なnano-lepidocrociteのbioavailabilityを比較したところ、コロイドと結びついているものはnano-lepidocrociteの還元速度の8倍の速度で還元された。これらの結果は、天然環境において有機物や有機物コロイドが鉄の動態に重要な寄与を及ぼしていることを示唆する。



 微生物的に生成された鉄酸化物の還元速度に非常に興味があります。DIRBを用いずに無機的に還元したような実験は無いのかな?



2013年2月28日木曜日

論: バクテリアマットにおける鉄酸化の培養実験



Control of ferrous iron oxidation within circumneutral microbial iron mats by cellular activity and autocatalysis
Rentz, J.A., Kraiya, C., Luther III, G.W., and Emerson, D. (2007) Environ. Sci. Technol., 41, 6084-6089



概要

 2箇所のサンプリングサイトで、10月と12月に採取されたバクテリアマットを培養し、環境中における微生物学的な鉄の酸化速度を見積もる。特に、バクテリアの細胞による(能動的な)酸化速度と、自己触媒的な酸化速度(バクテリアの細胞表層における受動的な酸化も含む)、バクテリアマットの組成が酸化速度に与える影響に着目する。

 酸化速度はサンプリングサイトの違い、採取の時期によって1オーダーほど異なる結果となった。鉄の酸化は二価鉄の量によって決定されていた。アジ化ナトリウム処理をした培養槽においても、バクテリアの活性がある場合と同オーダーの鉄酸化速度が観察された。これは、バクテリアが生成した鉄の酸化物による自己触媒的な鉄の酸化が重要であることを意味する。このため、鉄酸化細菌は自らが生成した鉄の酸化物と競合関係にあるのかもしれない。



 鉄酸化細菌によって生成される鉄の酸化物がbyproductsと表現されているけれど、byproductsなのかしら?単にproductsのような。

 4月6日から5月後半にかけてカナダのWaterloo Universityというところに短期滞在してくることになりました。2012年のInternational Society for Environmental Biogeochemistry (ISEB) の学会にて知り合った教授のところにご厄介になります。あれから半年、日本に帰国してからは、ISEBの時に感じた昂揚を胸に、バクテリアのことばかりを考えて研究生活を過ごしてまいりました (卒論指導時期を除く) 。

 鉄酸化・還元細菌の個体群動態と進化に関するモデル研究を中心に、化学合成細菌群衆に関連する共同研究を推進する予定です。向こうのラボでは実験も観測もモデルもやっているのですのよ!!(言葉では言い尽くせない興奮)



2013年2月26日火曜日

研: 下田臨海実験センター訪問



2月20日から22日にかけて、筑波大学下田臨海実験センターを訪問しました。

共同研究者との海洋酸性化関連の研究打ち合わせがメインの目的でしたが、プランクトンネットの実習にも参加させてもらえました。



プランクトン、とったどー!!

沿岸・沖合にてメッシュサイズの異なるネットでプランクトンを捕らえ、
その違いを調べる実習でした。




作業工程について、丁寧に指導していただきました。


研究室に戻ってから顕微鏡観察にも混ぜていただきました。
普段数字や記号やプログラムしか眺めることがないので、それはもう楽しいっ。

主に見られたのは珪藻、渦鞭毛藻、カイアシ類でした。加えてゴカイの幼生など。
動物プランクトンが想像していたよりはしこかったです。

下田臨海実験センターでは、現在海の生物のデータベース化に取り組んでいらっしゃるとのことで、顕微鏡画像の撮影をされていました。
そのうち公開されることと思いますので、こちらも楽しみです。

そうそう、下田臨海実験センターでは蛇口の中には、ひねると海水が出てくるものがあるのですよっ!!
海洋の研究者には理想的な実験施設だろうな〜。



2013年2月9日土曜日

詣: 滋賀の多賀大社と建部大社



 しばらく前のことになりますが、滋賀の多賀大社と建部大社を参拝して参りました。多賀大社のご祭神は伊邪那岐命(イザナギ)と伊邪那美命(イザナミ)、建部大社のご祭神は倭建命(ヤマトタケルノミコト)です。


はじめての近江鉄道。多賀大社前行きは魅惑の1両編成!


 多賀大社前で降車すると、立派な鳥居で此方と彼方の線引き。




数分参道を歩くと多賀大社に到着。




多賀大社は想像していたよりもこぢんまりとした佇まいでした。





色とりどりのおみくじが結ばれていました。
おみくじの色のバリエーションが豊富というのはあまり目にしないような。
まるで寒の内に咲いた花のよう。





お参り後に「糸切餅」をいただいてきました。
蒙古襲来に際し、蒙古軍の旗印(3本の糸)を「切る」ことで
勝利を祈願したそうです。

その後彦根城を見学してから建部大社にお参りに行こうと思いましたが...




楽座さんという素敵な和食屋を見つけてしまい
真っ昼間から濁りをいただくうちに、日本酒談義に。

喜楽長の「六方」という、あまり出回らない日本酒があるということをお聞きし、
いつか飲んでみたいなー、と思っていたところ...

「ありますよ、六方(にやり)」

た、頼むしかないじゃないですか!




また、酒器も素敵!!!

六方、本当に美味しかった...!
最初は奥行きのある、果実味のようなさらさらとした甘み、
それがどっしりとした日本酒の旨味となって、
酸も感じさせつつ最後はしっかり辛口。

こりゃーワインにはない美味しさ。世界に誇りたい、日本酒!!


そうこうしていたらすっかり陽も傾きはじめてきてしまったので
急遽建部大社へ移動。




 倭建命(ヤマトタケルノミコト)をお祭りする神社をお参りするのは
古事記の面白さに取り憑かれてから初めて。
今後も各地の神社をお参りしたいです。




 街中に、そこだけ浮島のように静けさを醸し出す境内でした。


彦根城は結局遠くから眺めただけに終わってしまったので、
是非また近いうちに滋賀に遊びに行きたいです。
次は近江八幡も訪れたい!




2013年2月8日金曜日

論: 深海に棲息するエビと鉄の酸化




Biotic and abiotic controls on iron oxyhydroxide formation in the gill chamber of the hydrothermal vent shrimp Rimicaris exoculata
Schmidt, C., Corbari, L., and Le Bris, N. (2009) Geobiology 7, 454-464



概要

 深海熱水系に棲息するエビRimicaris exoculataが、脱皮サイクル期間を通し、周辺環境の二価鉄の酸化にどれくらい寄与しているのかについて調べる。実際に鉄を酸化するのはRimicaris exoculataに共生する鉄酸化細菌である。

 Rainbow hydrothermal vent siteにおいてRimicaris exoculataをサンプリングし、鰓室の酸化鉄を溶解、溶存態鉄の濃度を測定した。また、Rimicaris exoculataの生息環境も同時にモニタリングし、Rimicaris exoculataの鰓室で鉄の酸化が周辺環境より卓越するのか、また、homogenous な鉄の酸化と heterogeneous な鉄の酸化のどちらが支配的であるのか、鉄の酸化の動態モデルにより検証した。

 Rimicaris exoculataの鰓室における鉄の酸化は周辺環境で生じる酸化と比較して進行が速いことが示された。Rimicaris exoculataの周囲では酸素濃度やpHの低下し、これによって homogeneous な鉄の酸化は周辺環境より進行が遅い。しかしながら、鉄の酸化物がある程度生成されると heterogeneous な鉄の酸化が始まり、鉄の酸化速度を支配すると考えられる。

 鉄の酸化動態モデルの計算結果からは非生物学的な heterogeneous (autocatalytic) な鉄の酸化が支配的であり、鉄酸化細菌による鉄の酸化が困難であることが示唆された。しかしながら、脱皮の初期段階では局所的な酸素濃度の低下により、鉄酸化細菌による鉄の酸化が可能かもしれないと考察する。



 生物学的な鉄の酸化と非生物学的な鉄の酸化の違いについて考える日々。Schmidtらの研究はサンプリング、観測、モデリングの組み合わせで、取り組み的には非常に魅力的だと思うのだけれど、酸化鉄のモデリングはこれでいいのかしら。特に式(9)が疑問。あと、式(7)がFe(III)-O-Fe+-dependentなのも疑問。どうしてFe(III)-OHではないのかしら。元の論文読んでみる必要があるなぁ。

 Rimicaris exoculataは画像検索すると可愛いエビさんに会える。ただし、うじゃ〜〜〜っと生き物がひしめいているのが苦手な方にはちょっと辛い画像もあるのでご注意を。脱皮サイクルと酸化速度の関連は、とっても興味深い。



2013年2月5日火曜日

論: 非生物学的な鉄酸化物と生物学的な鉄酸化物の違い




Bacillus subtilis bacteria hinder the oxidation and hydrolysis of Fe2+ ions
Fakih, M. et al. (2008) Environ. Sci. Technol., 42, 3194-3200



 バクテリアは鉄の二次鉱物の生成と密接に関係していることが認識されている。その一方で、微生物学的に生成されたFe(III)の沈殿物が、非生物学的に生成されたFe(III)の沈殿物と比較して、その組成や、反応速度論においてどのような違いがあるかについては不明な点が多い。Fakih et al. は実験微生物としてBacillus subtilisを対象とし、中性環境環境下で様々なFe2+濃度条件における培養を行い、SEMとXRDによって沈殿物の特徴について調べた。また、水素生成速度やレドックスポテンシャルの動態についても観測した。

 非生物的な酸化と微生物学的な酸化を比較した結果、H+の減少に対する鉄酸化物の生成量が化学量論的に異なることが明らかになった。これは、微生物学的な鉄の酸化においてoxidation/hydrolysisが不完全であることを意味する。また、SEMによる観察でも、非生物的な酸化と微生物学的な酸化によって生成した沈殿物に違いが見られた。また、バクテリアの菌密度も鉄の沈殿物の組成に影響を与えることが明らかになった。中程度の菌密度では結晶化度の低い粒子が生成されたのに対し、菌密度が高いときには鉄酸化物の粒子の生成が完全に阻害された。反応速度論的な影響としては、非生物学的な酸化の際には強いautocatalytic effect (自己触媒反応)の傾向が観察されたが、微生物学的な酸化の場合はautocatalytic effectが現れるまでより時間がかかり、また、その程度も非生物的な場合と比べて小さかった。これは、バクテリアのreactive sitesとFe2+が錯生成することによって、酸化や加水分解速度に影響が及んだからかもしれない。



 Vollarth et al. (2012)の論文の引用文献巡り中。気がつけば再び鉄に関わりのある研究に(学生の頃とは全く異なるアプローチで)携わることになりそうです。今日は久々に研究の時間が取れたので、Mathematicaにてモデリング。微生物学者や地球化学者に直感的に理解しやすい可視化を目指していますが、Manipulate関数は本当に良い!!

 関係ないですが、今日は立春並びに東風解凍。寒さもやや緩んできた...と思いきや、明日は大雪...?



論: 生物地球化学的な酸化還元過程が環境中の汚染物質の動態に与える影響のレビュウ (2)




Biogeochemical redox processes and their impact on contaminant dynamics
Borch, T. et al. (2010) Environ. Sci. Technol. 44, 15-23



この記事より続き。

Impact on Trace Elements

Trace Metals

 様々な人間活動により微量元素がredox-dynamicな環境中に負荷されている。Cr, Cu, Co, Ag, Tc, Hgなどの微量金属は複数の価数をもつ。これらの金属はFe2+やH2によって還元される。一方で、微生物は異化呼吸もしくは解毒的な経路で、様々な、かなり毒性の高い金属でさえも、直接で気に還元しうる。微量金属の還元はCr(VI)からCr(III)への還元のように可動性を減らす場合もあれば、Hg(II)からHg(0)への還元のように可動性を上昇する場合もある。

 微生物夜呼吸は金属と結合する natural organic matter (NOM) の固相-液層分別、吸着や沈殿平衡を介して、間接的に微量金属の化学種分別に影響する。微生物学的Co(III)-やNi(II)を含むgoethiteで報告されているように、微生物学的な酸化物の還元は吸着能を失わせる。また、放出されたFe2+は鉱物や有機物への吸着において、他の正に荷電した微量金属と競合するかもしれない。そのような可動性の上昇は、微量金属の吸着や共沈によって相殺されるかもしれない。

 微生物学的硫酸還元は chalcophile metals (親銅金属) の沈殿を促進するかもしれない。硫黄が豊富な堆積物中では、微量金属は硫化鉄と共陳しているか、異なった硫化金属を形成する。しかしながら重金属に汚染された淡水の湿地では親銅金属のavailabilityはしばしばそれらを還元する硫化物の量を超え、微量金属の動態は生物由来の硫化物との競争的な沈殿に強く影響される可能性がある。難溶性の硫化金属の沈殿とは対照的に、硫化金属クラスターの生成は、還元環境において金属の移動性をかなり促進するかもしれない。これは、酸化環境下においても反応速度論的な安定性(この場合は移動しやすいこと?)が維持される可能性があるためである。

 生物地球化学的酸化はO2が還元環境下にもたらされることよって駆動される。中性、アルカリ性pH環境下ではO2によるFe(II)の酸化が非生物学的に急激に進行するが、多くの過程は化学栄養細菌によってゆっくりと進行する。Fe-, Mn-, Al- (hydr)oxidesの沈殿は溶存態の微量金属を効果的に捕らえる。もし沈殿がナノ粒子やコロイドであれば、それらは水圏での微量金属の移動性を大いに促進する可能性がある。


Metalloids

 生物地球化学的レドックス反応過程はAsやSbのようなmetalloids (メタロイド元素)の環境中での運命に強く影響する。Asが飲料水の汚染で世界的な注目を集める一方、Sbによる汚染は局所的に重大である。Sbの価数、Fe (hydr)oxidesへの吸着はSbの毒性や移動性を支配する。

 バングラディシュにおける井戸掘削は浅層水圏の水文学的・生物地球化学的変化を引き起こし、ヒ素の地下水への混入に寄与した可能性があるが、その正確なメカニズムについてはまだ明らかではない。Asの移動性、bioavailabiliy、毒性、環境中での運命は、Asのキャリアの破壊、酸化還元状態やAsの化学種分別の変化などの、生物地球化学的な変化に支配される。地下水中の溶存態のAsの濃度は難溶性のiron (hydr)oxidesと密接に関係している。これは、iron (hydr)oxidesがAs(III)とAs(V)の両方を強く吸着するためである。還元的な地下水で溶存態のAsとFe(II)が高い濃度で観測されるのは、AsリッチなFe(III) (hydr)oxidesの還元が地質由来のAsの移動性に影響しているためである。





 最後まで終わらせたかったけど時間がなかったのでここまで。



2013年2月4日月曜日

研+α: 卒研発表終了




 2月3日(日)に卒業研究発表会が終了致しました。
 今回は初めて自分の学生が発表することとなり、わたしもドキドキ...。

 情報科の、特に自然情報系の教員の皆様におかれましては、学生への活発な質問・コメントをいただき、誠にありがとうございました。Oちゃんが「○○先生に研究面白かったって言ってもらえました!」とニコニコ顔で伝えに来てくれたのが印象的でした。研究の楽しさを卒研発表会を通して伝えていただき、感謝です。

 卒研発表のお昼休みは、これまでのストレス発散にと節分を敢行!


 学生の名誉のため、鬼役をかってでたのは自らです。念のため。

 学生の写真の掲載は若干憚られるものがあるので控えますが、皆で元気に豆まきしました。豆まきに、文字通り全力投球する女子大生。粋!!




海苔が上あごに貼り付いて苦しかった恵方巻き。。


 今後、豆まきは瀬戸研卒業のための必修単位にしようかと思います。卒論提出まであともう少し。頑張ろう!




2013年2月2日土曜日

論: 生物地球化学的な酸化還元過程が環境中の汚染物質の動態に与える影響のレビュウ (1)




Biogeochemical redox processes and their impact on contaminant dynamics
Borch, T. et al. (2010) Environ. Sci. Technol. 44, 15-23



 環境汚染の動態に影響を及ぼす重要な生物地球化学的酸化還元反応について要約する。 

Major elements, minerals, and humic substances

 地球上の全ての生命は酸化還元反応からエネルギーを得る。

 炭素サイクルは水から与えられる電子により二酸化案蘇我固定される酸素発生型の光合成で駆動される。無酸素発生型の光合成、化学合成による炭素の合成は局所的な炭素源として重要かもしれない。有機物、その他の生物由来の還元剤(例えばパイライト, FeS2)の隔離は、風化によって酸素を消費し、地球表層の気候において地質年代学的に重要な役割を果たした。

 NとPは炭素の酸化還元反応と密接に関与している。窒素は様々な酸化数をもち、酸化数の変わる反応(窒素固定や硝化)は微生物によって促進される。微生物による窒素の利用はその形態に依存し、その結果有機物の生成や循環に影響する。

 パイライトの酸化と結びつく脱窒は肥料負荷の多い水域で重要な硝酸の除去過程である。しかしながら、この反応により生じた硫酸塩は微生物学的硫酸還元を促進する可能性があり、Fe(III) (hydr)oxidesを還元溶解するかもしれない。その結果、鉄にとらわれていたリンが放出し、富栄養化が引き起こされる可能性がある。

 鉄は、最も地球表層において存在量の多い遷移元素として、環境生物地球化学において特に重要な役割を果たしている。酸化型の鉄は低pH環境で溶けやすく、中性pH環境で沈降する。多くの栄養塩、微量元素、汚染物質はFe(III) mineralsに吸着される。Fe(III) (hydr)oxidesの表面は多くの酸化還元反応を触媒する場となっている。
 Fe(III) (hydr)oxidesは還元環境下において例えば硫酸塩によって還元され、有害なソルベートを放出する可能性がある。また、Fe(III)の好物は異化鉄還元細菌の最終電子受容体でもある。異化鉄還元細菌は水素や有機物のcytoplasmic oxidationと難溶解のFe(III)鉱物のextracellular reductionを結びつけ、電子を受け渡しするリン酸化反応を介してエネルギーを得る。Fe(III)鉱物の還元は可溶なFe(II)や、Fe(II)やFe(III)の様々な二次鉱物を生成する。Fe(II)は溶存態でも、吸着された状態でも、固相状態でも、様々な非生物学的還元において強力な還元剤としての役割を担う。

 Fe(II)の酸化は好気・嫌気細菌によって触媒されるかもしれない。微生物学的Fe(II)の酸化は、化学的な酸化が起こりにくい低pH環境で一般的に見られる。中性pH環境下では、Fe(II)酸化細菌は化学的酸化と競争しなければならず、そのためoxic-anoxic境界(例えば水浸しになった土壌中における植物の根の周辺)根の低酸素下において主に生存する。Phototrophic and nitrate-dependent Fe(II)-oxidizing bacteria (光合成硝酸依存型Fe(II)酸化細菌) は中性pHで還元的な環境下で硝酸やMn(IV)の酸化物を用いてFe(II)を酸化する。

 マンガン酸化物は表面積が大きく、その存在量に対して環境中の化学への寄与が大きい。マンガン酸化物は重金属や栄養塩の吸着剤となりうる。よって、天然環境中における汚染物質のシンクとしてふるまう。マンガンはセレンやクロム、ヒ素の酸化に寄与する。また、M(II)の酸化は様々なバクテリアや菌類によって触媒され、生物学的なマンガン酸化物は環境中のマンガン酸化物の主なソースであると考えられている。生物学的に生成されたMn(II)の酸化物ははじめ弱く結晶化しているが、最終的な状態は環境の状態に依存する。

 水圏におけるFe(III)やMn(III, IV)鉱物表面の構造や反応性は無機の吸着剤やnatural organic matter (NOM)に影響される。フミン質はredox-activeで、微生物により還元されうる。例えば、難溶性のFe(III)酸化物と微生物の細胞の電子を受け渡しをすることで、微生物学的還元を促進する。Fe(III)とMn(IV)鉱物表面に対するNOM、リン酸塩、重炭酸塩の吸着し、汚染物質と交換して汚染物質の放出を引き起こすかもしれない。一方で、鉱物に対する微生物のアクセスを制限することで、酵素反応に対して固相を保護する役割を担っているかもしれない。フミン質はイオンとの錯生成、鉱物表面への吸着を通してFeやMn鉱物のbiomineralizationに影響し、一般的に結晶化度の低い鉱物を生成する。

(続く)




 要約しようにもどこもかしこも重要なことが記述されているレビュウだったので、ざっくりと全体を訳すことにした。レビューはすぐ読めるのだけれど、日本語に訳すと割と時間がかかるなー。酸化還元な生物地球化学に興味をもってくれる人を増やすための、布教活動の一環。



研: 卒論発表




2月3日(日)に理学部情報科学科卒業発表会がG302室にて開催されます。
当研究室の学生が4人発表します。彼女達は私が奈良女で初めて指導した学生です。
なっちょらんところも多々ありますが、もしお時間ありましたらお越しの上、ご指導の程どうぞよろしくお願い致します。


瀬戸研究室の発表(9:50-10:30)

塚田 萌放射性セシウム-137を対象とした食品安全性検査方法の検討
小田 安希子人の土地利用がミツバチならびに植物の多様性に与える影響の解明
原 千尋深海熱水系の化学合成細菌の動態のモデル化
松尾 玲奈二酸化炭素濃度上昇に対する植物プランクトンによるpH 緩衝効果


尚、当日は節分ですので、豆まきを企画しております。こちらへの参加も歓迎です。



2013年2月1日金曜日

論: 低酸素条件下での鉄酸化細菌




Oxygen dependency of Neutrophilic Fe(II) oxidation by Leptothrix differs from abiotic reaction
Vollrath, S., Behrends, T., and Van Cappellen, P. (2012) Geomicrobiology J. 29, 550-560



 pH中性の環境下でFe(II)を酸化する鉄酸化細菌が様々な環境中に存在していることが明らかになっている。しかしながら、pH中性の環境下では無機的な反応が進行しやすいため、無機的な反応と微生物学的な反応が競合することが予測される。これらの鉄酸化細菌は酸素濃度が低いところで卓越する傾向にあり、そのような環境下で無機的な鉄の酸化より効率的に鉄を酸化するかもしれない。この仮説を、Leptothrix chlodnii Appelsの培養実験より検証する。

 無機的・微生物学的鉄の酸化の両方において、鉄の酸化の時間動態に2つの異なる特徴をもつフェーズが現れた。また、鉄酸化物による鉄酸化の促進が見られた。

 酸素濃度に対する鉄酸化速度の応答は、微生物学的鉄酸化ではミカエリスメンテン型の応答が観察された。一方、無機的鉄酸化では線形の応答が観察された。

 時間が経つにつれて微生物学的な鉄の酸化量が無機的な鉄の酸化量を下回る。この原因として、細胞の表面における鉄酸化物の吸着、もしくはextracellular polymetric substances (EPS)による阻害効果が考えられる。



 なんともまあ素敵なデータ満載の論文...!鉄酸化細菌の適応戦略の側面から面白いモデルの研究ができるかなと思っています。カナダに行く前の宿題。結果は...今後発表するであろう論文で!!



本: 古事記 増補新版 (梅原猛)




古事記 増補版 梅原猛 (著)



 近年、古事記の面白さを再認識し、各地方の神社を訪れる際に、事前にその神社の祭神にまつわる話を読み直しています。

 古事記は最古の歴史書です。それとともに、日本の宗教史を伝えるものでもあり、文学でもあります。

 わたしはといえば、古代史として古事記を読み解くことに興味がありますが、なかなかそんな時間もとれないので、文学として古事記を読むのが好きです。特に原文で読む古事記の躍動感ははかばかしい。
 例えば、速須佐之男命が高天原に上ってくるときの天照大御神の描写。心揺さぶられます。


 沫雪如す 蹶ゑ散して、いつの男建、踏み建びて待ち問ひたまひしく、「何故とかも上り来ませる」ととひたまひき。


 (訳) 沫雪のように庭土を踏み蹴散らし、勇ましく雄叫びをあげ、「何故高天の原に上って来たのか」と問いただした。


 原文と口語でこうも文章から与えられる景色が違うものか!!!原文の奥行きや神々しさに、口語が敵うわけがなく。どうにも原文がかーーーーっこええので、毎度苦労しながら原文を読んでいます。

 先日、Amazon kindleストアにて、梅原猛さんの古事記が販売されていたので、うっかりとポチって購入してしまいました。古事記訳文が読みたかったわけではなく、梅原さんの「古事記論」が目当てでした。大変興味深く拝読。

 例えば古事記とアイヌ語の共通点(チハヤフルの語源とか、漫画「ちはやふる」ファンには胸が熱くなるでよ!)、稗田阿礼=藤原不比等による歴史改変説、古事記原作者柿本人麿説などなど...。ますますと古代史研究に興味がわいてしまうのでした。時間が無限にあればいいのにっっっ!!!

2013年1月30日水曜日

論: 鉄酸化物の還元溶解




Kinetics of reductive bulk dissolution of lepidocrocite, ferrihydrite, and geothite
Larsen, O., and Postma, D. (2001) Geochimica et Cosmochimica Acta, 65(9), 1367–1379



 10 mM ascorbic acid at pH 3で3つの鉄酸化物を還元溶解し、reactivityを調べ、reactivityが一体何に起因するのかをChristoffersen and Christoffersen (1976) の鉱物の溶解の式を用いて考察する。式は以下のように与えられる:


ここで、Jは全溶解速度(mol/s)、mは鉄酸化物量を、m0は鉄酸化物量の初期条件を表す。関数fgはそれぞれ鉄酸化物の残存率が溶解に与える影響、溶液の組成(主に還元剤の量)が溶解に与える影響を意味する。本研究ではf(m/m0)=(m/m0)γ, g(C)は一定とし、以下のようにおく:


 溶解速度k'は3種の鉄酸化物で大きく異なり、2-line ferrihydrite > lepidocrocite > poorly crystaline goethiteの順で速かった。多くの実験では溶解速度は表面積に依存しないという結果になったが、lepidocrociteでは表面積に対して線形に溶解速度が上昇する場合があった。これは、溶解速度に対して表面積でなく鉱物の組成が影響していることを意味する。

 γk'と同様3種の鉱物について求められた。γは様々な要因(結晶のサイズ分布、結晶の表面積、reactive siteの密度など)に影響されるが、結晶サイズの分布が還元溶解には最も影響が大きいと考えられる。



 鉄還元細菌のことをより詳しく知るため、まずは無機的な鉱物の還元と溶解の基礎について復習中。無機的な還元だけでも複雑だ。EhとpH、鉄の濃度を連続測定しながら細胞数のデータを取るとか...無理かしら...。reductive dissolutionの日本語訳は還元溶解でいいのかしら?

 今日は午前中研究室の発表練習。午後は卒論のペン入れ。わたしにも、、プログラミングと手計算をする時間をください。。



2013年1月29日火曜日

論: Chemical versus microbial extractions of Fe(III)




Reactive iron(III) in sediments: Chemical versus microbial extractions
Hyacinthe, C., Bonnevile, S., and Van Cappellen, P. (2006) Geochimica et Cosmochimica Acta, 70, 4166–4180



 富栄養化したScheldt estuary (ベルギーとオランダにまたがるスヘルデ川の河口)で堆積物を採取、化学的・微生物学的鉄の抽出について比較。化学的抽出にはascorbate-citrate (buffered at pH 7.5), ascorbic acid, 1M HClの3つで処理。リガンドもしくは酸によって促進される還元溶解か、プロトンによって促進される溶解かが異なる。微生物学的抽出ではO2の代わりにFe3+を最終電子受容体として呼吸をおこなうShewanella putrefaciensを培養。堆積物中の鉄のbioavailabilityについても評価する。

 実験の結果、サンプルより抽出された鉄の量は、全てのサンプルにおいて ascorbate < acid ascorbic < HCl で多かった。つまり、酸によって促進される溶解のほうがFe(II)や反応性の低いFe(III)を溶解させる。堆積物中に含まれていた抽出される鉄の最大量は、the reactive continum modelで実験データをフィッティングすることによって求めた。S. putrefaciensによる鉄の抽出量は中性のpH付近でcitrateの存在下でascorbateで鉄の抽出を行った場合と直線関係にあった。つまり、堆積物中のbioavailableな鉄の量を見積もる際には、同条件でascorbateによる鉄の抽出を行う方法が適している。

 しかしながら、ascorbateで還元される鉄の量のうち、S. putrefaciensによって用いられる量は65%程度であった。これは固相のFe(III)への物理的なアクセスによる制限によるものかもしれない。



 化学 vs 微生物学的な鉄の溶解実験で、bioavailableな鉄の見積もり方について検討した研究。天然環境のお仕事は魅力的に見えるけれど、わたしは圧倒的に培養実験のほうが面白いと思う!どこまでが「無機物」で説明できる現象で、どこからが「微生物」でしか説明できない現象なのか、それを突き詰めるには培養実験を繰り返すしかないのだろうな。あああ、培養とモデルを組み合わせた仕事がしたい。うずうず。

 まだ本決定ではないけれど、4月からこの論文のラストオーサーのPhilippeのグループのところで1ヶ月半ほど客員研究員として研究してくる予定。も〜〜〜、楽しみすぎて楽しみすぎて仕方がない!!!向こうに行くまでになんとか進めておきたい仕事があるけれど、今はみんなの卒論にひたすら赤を入れる日々...!!!あとも少しで提出だ、ラストスパート頑張れな!!!



2013年1月28日月曜日

論: 昔々から硫黄サイクルを回していた細菌さん達




Contributions to late Archaean sulphur cycling by life on land
Stüeken, E.E., Catling, D.C., and Buick, R. (2012) Nature Geoscience, 5, 722–725



 微生物による酸素を用いた陸上のパイライト(FeS2)の酸化は少なくとも2.5 Gyr 以前から行われており、硫黄風化フラックスの総量に対してかなりの比率を占めていたようであることを、マスバランスモデルのフラックス計算により指摘。始生代から初期原生代における海洋の硫黄の存在量データと、海洋への火山活動による硫黄供給フラックス・生物/非生物的風化の硫黄供給フラックスを考慮したマスバランスモデルを組み合わせることで、非生物的風化では硫黄の風化フラックスの総量を説明できないことについて言及。同時期に揮発性ではないモリブデンが堆積物中で増加していたことも確認されたため、説明のつかない風化フラックスの差分は微生物によるパイライトの酸化により説明できるものと結論づける。パイライトを酸化する細菌が存在したことで硫化物の海洋への供給が増え、海洋生態系に大きな影響を及んだことが予想される。もし硫化物の還元がメタンの発生を抑制したならば、大気中への酸素の供給を促進したことも考えられる。



 細かいモデリングのところにも興味があるので、SIを読まなければ。あと、同筆者の面白そうなペーパーがGeobiologyに掲載されていたので、そちらも明日読みたいな。それにしても今日は自分の研究がさっぱりできなかったので、明日は少しでも研究の時間が取れるといいな。。な〜んど言っても同じミスを続けている卒論。最初はできなくても仕方が無いが、言われても変わらないようならもう一年やり直しだぞ〜〜〜!



BBC: Will we ever... lose all of our coral reefs?




Will we ever... lose all of our coral reefs? - from BBC Future



 A third of reef-buikding corals are in danger of extinction across the world, and the reefs are in serious decline. In Caribbean sea, the proportion of the reef covered by live coral has been plummeting from 50% in the 1970s to just 8% nowadays.

 Coral reefs have been besieged with multiple anthoropogenic factors. For example, rampant overfishing declines the number of herbivorous fish that consume competitors of corals, such as seaweed and algae. Some diseases are exacerbated by bacteria carried in human sewage, and agricultural run-offs load seas with excess of nutrient, results in algae blooms.

 Climate change, especially the vast input of carbon dioxide, is considered as the most responsible one for the plunge of coral reefs. The majority of corals seem to be sensitive to the increase of temperature, In warmer water, corals expel the algae that live inside their tissues and produce nutrients by harnessing sunlight, which causes corals bleached. Meanwhile, the decline of ocean pH induced by the rise in carbon dioxide, so-called ocean acidification, inhibits corals from building their limestone fortresses.

 An ecologist remarks that there is no hope to save the global coral reef ecosystems, although many other coral scientists see less doom and gloom, and call for help from local communities.

 Corals could survive ancient dramatic climate fluctuation for several times, therefore they proved to be remarkably resilient. However, the recent upheaval of temperature is so rapid that some corals species end up with extinction.



2013年1月27日日曜日

論: 海洋酸性化と鉄のbioavailability




Effect of Ocean Acidification on Iron Availability to Marine Phytoplankton
Shi D., Xu, Y., Hopkinson, B.M., and Morel F.M.M. (2010) Science 327, 676-679



 二酸化炭素濃度上昇に伴う海洋酸性化により海水中の鉄の存在形態が変わり、植物プランクトンの成長が阻害されることがあることを実験により証明。実験対象はThalassiosira weissflogii, Thalassiosira oceanica, Phaeodactylum tricornutum, Emiliana huxleyiの4種。EDTAでバッファーした培養液中で二酸化炭素分圧を変え、定常状態時の鉄吸収速度を測定し、pHの低下に伴い鉄の吸収速度が低下していることを確認。鉄の吸収速度の低下はpHによる生理学的な影響では無く(このロジックについてはよく説明されていないように思うのだが)、鉄のspeciationの変化に起因すると結論づける。具体的には錯解離定数の変化、錯生成した鉄の酵素による還元、コロイドの溶解度、細胞壁への吸着、などがpHによる影響を被る。



 酸性化によってむしろ鉄の溶解度が上昇してbioavailableになると単純に考えていたので興味深く読む。存在形態のことはちゃんと考えないとだめだな、確かにあり得る。反省。Speciationが重要となると、有機物の存在とその錯生成も重要なファクターなのだろうな。評価が難しそうだけれど。



本: 下流志向 - 学ばない子どもたち働かない若者たち

下流志向 - 学ばない子どもたち働かない若者たち 内田樹著 (講談社文庫)



 子どもたちの学力が年々低下していることが指摘され、学力の引き上げをしなければならないという問題意識が共有される一方で、ではそもそも何故学力が低下し続けているのか?という問いに対しては我々は考えることを放棄してしまっているのではないだろうか。

 本書では子どもたちが学び、並びに若者が労働から逃走する理由を、彼らが「消費者」としての立場で教育・労働と向き合っているためと洞察する。つまり、子どもたちや若者は、教育や労働から得る報酬が、自分の「ものさし」に従い自分の支払い(努力)と等価交換でないと判断するならば、教育や労働を価値がないものと見なすように変貌してきているのではないか、という見解である。更に筆者は、彼らの「ものさし」が無時間的であるために、現在の「好き・嫌い」という刹那的な判断に基づいて自己決定を行うことに高い満足を得ていることを指摘する。そこには将来的に得る可能性のある価値は含まれない。


 非常に短い大学教育の現場での経験からではあるが、この意見は的を得ているように思う。以前、講義の最中に、ある学生から

 「この作業を行うことにどのような意味があるのですか?」

と問われたことがある。エクセルでのソートを説明する際に、結果がどうなるのかを伏せたままで表と関数の入力を指示したときの話である。

 「全ての作業が完了したときに今行っている作業の意味が理解できるから、まずはその全てを実践してみなさい」

と返答すると、その学生は非常に不本意という顔で、不快感を顕わにしながら作業に戻った。その後ソートを実行させると、何か納得していたようではあったが。

 学生達の物事への取り組みの傾向として、「結果がどうなるかわからないことはやらない」ように変わってきているのではないか、と感じる。「学習することにどんな意味があるのか?」その意味は学習をしないととわからないし、学習することで意味は変わっていく。

 もう少しかみ砕いて、わたしの解釈を含めて言うならば、学習は自らの可能性を拡張する機会だ。最近よく聞く若者の悩みの1つに

「自分が何をしたいのかわからない」

というものがあるが、何も知ろうと思わなければ、何をしたいのかわからないのは当然ではないだろうか、と思う。また、何か新しいものと出会った際に、現状の自分の「好き・嫌い」だけでそれと向き合うか否かを決定していては、自分の可能性は広がらない。

友人の言葉で好きな言葉がある。彼女の父親の言葉だそうだが、

「食べ物の好き嫌いを許さないわけではない。しかし食わず嫌いはいけない。一口でも食べて判断しろ」

というものだ。これは学問にもあてはまる。まずその分野が本当に嫌いか、自分に合わないかを知るために、本気で取り組み合ったか? その上で人には向き不向きというものがあるから、諦めが必要な場合もある。ただ、本気でそのような取り組みをしているものは少ないように思うのだ。

 「どうして勉強 (労働) しなければならないのか?」と思うのであれば、まず勉強「しない」ことのメリット、デメリットを考えてみたら良いのではないかと思う。メリットはおそらく現状の自分が楽しい気分で居られる、というところだろうか。そこに将来の自分のメリットは考慮されているだろうか? 例えば労働しないことで将来の自分がホームレスとして生きるような可能性を考慮し、そのリスクを受け入れる覚悟はあるのだろうか。そういった絶対たる信念や覚悟をもって「さぼる」ことを選んでいる人間には、まだ会ったことがない。


 とまあ、どうも私は説教臭くなるのだが、若くて時間があるうちに、あまり好き嫌いせず、なんでも一所懸命やってみろよ、というのが私の主張です。井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る? その「深さ」は何と比較して「深い」のか?

 内田樹の本は学生に勧めたい。特に、寝ながら学べる構造主義女は何を欲望するか? は、読んでみて欲しいと思う。



思: ブログのモチベーション

 さいきん(を変換すると"細菌"が一番初めに現れる我がPC)ブログをまじめに更新している。これは、「1日最低1本は論文を読む」ことをサボらないためである。疲れていたり忙しかったりすると、ついつい「明日読むか」などと思ってしまうので、毎日の更新で「サボっていない」ことを証明することを目標としてみる。要は、己に対するプレッシャー。

 良い論文を書くためには、良い論文をたくさん読むことが必要不可欠。あと、学生には論文だけでなくて、良い本をたくさん読んで欲しい。理学書に限らず。



論: Geobacteraceae in retentostats

How Geobacteraceae may dominate subsurface biodegradation: physiology of Geobacter metallireducens in slow-growth habitat-simulating retentostats

Lin, B., Westerhoff, H.V., and Röling W.F.M. (2009) Environ. Microbiol. 11(9), 2425-2433



 Geobacter metallireducensをretentostat (リテントスタット)で培養、the maximum growth yield (ここでは炭素転換効率で評価される)や細胞の維持に必要なエネルギー量などを見積もる。

 Geobacteraceaeは異化的に鉄を還元する細菌で、鉄が還元されうる還元的な環境、特に富栄養化した水圏環境でしばしば存在が確認されている。自然環境下における化学合成細菌の増殖速度は一般的に非常に遅いが、ケモスタットを用いた連続培養系では細胞の流出が生じるため高い増殖速度で培養を行う必要がある。一方リテントスタットでは細胞の流出が無いため自然環境下に近い増殖速度での培養が可能である。

 LinらはGeobacter metallireducensを0.0008h-1の増殖速度で培養。細胞の維持に必要なエネルギー量が他の従属栄養バクテリアと比較して非常に低いことを確認。また、鉄やフミン酸の代わりとなる電子受容体、2,6-anthraquinone disulfonate(AQDS)を新たなタンパク質合成を必要とせず代替として利用することを確認。これらの特徴によってGeobacteraceaeは鉄が還元されるような還元的な環境下で優勢となるのかもしれない。



 モデル計算に必要なパラメタが手に入り、感謝。実験とモデル、一緒に進められればなぁ。しっかし化学合成細菌の培養は時間がかかるものですね。。現状私のモデルでは炭素転換効率は固定にしてしまっているが、von Stockarらの研究での言及なども考慮して、thermodynmic-basedで考える必要があるかもしれない。


2013年1月25日金曜日

論: 人間に例えるならば20kmの距離電気を受け渡ししているかもしれないバクテリアさんたち

Electric currents couple spatially separated biogeochemical processes in marine sediment
Nielsen L.P. et al. (2010) Nature, 463(25) 1071-1074

Sediment reactions defy dogma
Nealson K.H. (2010) Nature, 463(25) 1033-1034



 堆積物のインキュベーションの結果から、表層より10数mm深部の硫化物の酸化と表層の酸素の還元との間で電子の授受が行われていることを提唱した研究。

 硫化物に富む海洋堆積物の表面を酸化的もしくは還元的海水で処理し、インキュベーションを行った。一ヶ月後、酸化的海水で処理した堆積物では表層での酸素の減少と10数mm深部での硫化物の減少が確認された。硫化物の酸化は状況証拠より鉄、マンガン、硝酸などによるものではなく、表層での酸素の還元と硫化物の酸化との間で電子の授受が行われて生じるものと考えられる。これは表層でのpH上昇が酸素の還元によってのみ説明可能なことからも裏付けられる。表層から酸素が拡散によって深部に供給された可能性もあるが、表層の酸素が枯渇した際には1hというタイムスケールで硫化物の増加が起こる。このタイムスケールは酸素の拡散速度では説明不可能であるため、bacterial nanowiresを介した電子の授受によるものではないかと考えられる。



 なんとも胸の熱くなる論文を読み逃していた。2010年2月かぁ、Natureの個人購読はじめる前だな、とほほ。10数mmの空間スケールでの電子の授受、というとたいしたこと無いように聞こえるかもしれませんが、人間に例えるならばその距離は20kmだそうです(!!)。その間様々なバクテリア種で構成されているであろうにも関わらず、それぞれの端と端でお互い得をするように電子を受け渡ししているなら驚愕。現象としては確かにそれらしくて興味深いのだけれど、どういうメカニズムで電子の受け渡しが可能になっているのだろう。Bacterial nanowireは異なる種間でも接続して電子を受け渡すのだろうか?これが本当なら堆積物モデリングの際に酸素を拡散のみで記述して酸化還元を見積もるやり方は間違いを生じる可能性がある。本論文の仮説を鵜呑みにすることはやや早計かと思うので、周辺について勉強して(特にbacterial nanowire)じっくり考えてみたい。



悩: 2013年度日本地球惑星科学連合大会の参加

 5月19日から24日にかけて、幕張メッセにて2013年度日本地球惑星科学連合大会が開催される。

 今年は久々に参加しようかと考えるものの、カナダ滞在の帰国翌日(予定)からの開催...うーむ。Goldschmidt 2013と日本地球化学会2013年度大会での発表もあるしなぁ。でも興味深いセッションも見受けられるので、都合がつきそうだったら参加したい。

 重要

 地球惑星連合大会の要旨投稿締切: (早期) 2月3日(日) 24:00、 (最終) 2月15日(金) 正午12:00

 Goldschmidt 2013 Abstract submission deadline: April 12 (23:59 UTC)

本: Processes in Microbial Ecology

Processes in Microbial Ecology (Kirchman, D.L.著) をKindle editionで購入。Kindle editionだと公費で買えないだろうなー、ということで自腹での出費。しかしながら既にペーパーバックも出ているのでお安く購入できました。

買ったばかりでまだ全て読み終わっていないけれど、平易に一般的なことが手広く書かれている感じ。こういう教科書が日本語であれば良いのになー。生物地球化学関連の教科書も日本語の良書は無く、未だにSchlesinger W.H. の Biogeochemistry が私のバイブル。

お目当ては主にgeomicrobiologyに関するセッション。カナダ滞在中実験の人たちと良いコラボレーションができるように、できる限り知識を増やしておきたい。

読み終えたところをメモ書きしていこうかと思います。





Chapter 13 Introduction to geomicrobiology

Cell surface charge, metal sorption, and microbial attachment

 微生物の細胞の表面は一般的に負に帯電しているため、正に荷電した元素や化合物を引き寄せ、細胞とその周囲との間に荷電の勾配を生じる。表面電荷は微生物の種、生育環境などに依存する。また、pHが低い場合には表面荷電は水素イオンによって中和される。大部分の微生物のisoelectric point (等電点)はpH2 - 4程度である。

Metal sorption

 細胞が負に帯電していること、また表面積が大きいことにより、微生物は正に荷電した金属を吸着し、反応サイトの場となっている。吸着モデルにはLangmuir式やBET吸着等温式などがある。微生物は細胞表面の官能基を変えることである程度吸着量を制御できる。それによって、金属を吸着することで細胞壁を安定させたり、金属による毒性を低減させたりすることで利益を得る。

Iron uptake mediated by siderophores and other metal ligands

 ある種の微生物は鉄の制限下においてsiderophores (シデロフォア) と呼ばれるリガンド (もしくはキレート)を細胞外に放出する。siderophoresと鉄と錯生成することでFe(III)は溶存態として存在し、沈降が防がれる。多くのsiderophoresはバクテリアによって合成されており、大きく分けてhydroxamates, catecholates, alpha-hydroxycarboxylatesの3つに分類される。Siderophoresを合成しない細菌もsiderophore-iron complex (錯体) を利用することが確認されているので、siderophoresを合成する細菌は"ただ乗り"されているが、siderophoresを合成するメリットがただ乗りのデメリットを上回るようである。

 鉄の他にも銅やビタミンを得るためにリガンドを放出するものの存在も確認されている。




2013年1月24日木曜日

詣: 檜原神社, 狭井神社, 大神神社

 今月の三連休中に友人達が奈良に遊びに来ており、檜原(ひばら)神社, 狭井(さい)神社, 大神(おおみわ)神社を観光しました。奈良の神社と言えば春日大社が有名ですが、大神神社の歴史は春日大社よりも古く、最古の神社の一つと言われています。三輪山をご神体とし、祭神は大物主大神とされています。大物主大神は出雲系で国譲りを迫られた大国主命の別称であり、和魂(にぎみたま)とされていますが、大神神社の大物主大神は大国主命とは独立した神であったとする説もあるようです。


写真は檜原神社から狭井神社までの途中


 狭井神社からは三輪山への登拝が可能です。今回は時間が無くて断念致しました。檜原神社から大神神社までは他にも様々な神社が奉られており、また、近くには有名な古墳も点在します。半日ほど時間をとってのんびり散策するのがお勧めです。


貴船神社。見目麗しく、参拝後に謹んで撮影させていただきました。


 三輪は三輪そうめんでも有名。お越しの際には是非ご賞味あれ。



歴史のある神社は風格があって圧倒されます。今年は是非とも島根・鳥取に赴き、神社巡りをしたい...!妖怪も大好きなので、鳥取は憧れの地。

論: Energy-based modelsのレビュー

Energy-based models for environmental biotechnology
Rodríguez J. et al. (2008) Trends in Biotechnology 26(7) 366-374


Environmental biotechnology is evolving

 廃棄物からのエネルギー回収などのために微生物学的処理が試みられているが、mixed-cltureでは期待していたような結果が得られないことが往々にある。これは物理化学的な環境のわずかな変化や微生物間の競争の結果に依存すると考えらる。このような複雑な相互作用を理解するために数理モデルが役立つ。


Are existing models adequate? 

 数理モデル研究はMass-balance based modelsとして発展し、現在はkinetic-based-modelsに拡張される。しかし、kinetic-based-modelsには以下のような問題点が挙げられる:


  1. 微生物と化学反応の動態を別々に扱う。
  2. 微生物間の競争は無視される。
  3. エネルギー的、熱力学的な制限をしばしば無視する。


What would a suitable model look like?

 Mixed-cultureにおける基質や生成物のフラックスを定量的に評価する数理モデルはその微生物群衆内で生じる反応に関する代謝のstoichiometryとkineticsを考慮しなければならない。現象を説明するために重要な項目を含み、考慮するプロセスは最小化されなければならない。


Including thermodynamics

 質量保存の法則に加え、熱力学的な制限も考慮されるべきであり、熱力学的な側面を考慮したモデルも存在する (これをenergetic modelsと総称して良いのだろうか?)しかしながら熱力学的な制限を加えただけでkinetic-based-modelsは現象をうまく説明できない。これはエネルギー収率を一定と仮定していたり、微生物間の相互作用を考慮しないことに起因する。


An energetic framework

 "Gibbs energy calculations allow the identification of the energy niches that are needed for redox reactions to occur."

 Energetic nichesと微生物活動の関係はまだ明らかにはされていないが、energetic modelsからは重要な情報が与えられる。例えば、ある特定の生成物を得るための特定の反応を伴うプロセスの開発に役立つ。


A metabolic network modelling approach based on energy

 環境要因は微生物が反応から得るエネルギー量に影響する。特に興味が持たれるのはどのような条件の際にエネルギー収量が最大化するかである。また、得られるエネルギー量を最大化するために選択圧がかかると考えられる。このため、進化学的な側面もモデルで考慮する必要があるのかもしれない。





 完全な要約ではなく、興味がある部分の抜き出し。化学合成細菌の動態の数理モデルはまだまだやることがありそうだ。燃える!




2013年1月23日水曜日

BBC: Is that our dream life?

Will we ever... photosynthesise like plants?

 Increase demand for food production is one of the greatest issues for the sustainable development of humanities. Instead of consuming food, is it possible to feed us with alternative energy: light?

 According to this article, there are a few exceptional evidences that not only plants but also animals, such as pea aphid and Oriental hornet, are capable of photosynthesis. Besides, some non-photosynthetic organisms form a partnership with photosynthetic organisms, which provide their partners with energy.

  So, it sounds not 100% impossible for us to acquire photosynthetic ability, only if we abandon the way we live and begin to live like plants. Generally speaking, animals need more energy than plants, due to, e.g., physical movements or the maintenance of body temperature. In order to gain sufficient energy to maintain our metabolism, we need to enlarge the surface area to its volume and always stand still.



 If humanities were capable of photosynthesise, the food shortage problem would be completely solved and we might live happier, feeling safe and secure. However, we would lose our greatest joy to enjoy delicacies.

論: 窒素の種・群衆・生態学的閾値な話

Impact of nitrogen deposition at the species level
Payne, R.J. et al. (2003) PNAS 110(3) 984-987

 ヨーロッパの酸性質の草原地帯を対象にメタデータ解析を行ったところ、窒素負荷量に対して統計学的に有意な種多様性の損失が確認された。

 ある種の存在量が統計学的に変化する窒素負荷量 (critical-point) の約60%が現行の閾値レベルを下回っており、また、最低レベルの窒素負荷量においても感受性が高い種に影響が及ぶ可能性があることが示唆された。

 群衆レベルでは14.2 kg N ha-1yr-1がロバストな閾値のようであり、これ以上の窒素負荷を被る場所では、窒素負荷に対し耐性がある群衆構造に既に変遷していると考えられる。よって、窒素に対し感受性が高い種を保全するためには少量の新たな負荷であっても避けるべきである。




 これだけの結果が出るデータがそろっているのが素晴ら羨ましい。定量的な閾値の導出のためにはボトムアップなモデリングよりも統計モデルのほうが威力があるなぁ。

2013年1月21日月曜日

悩:Nature Geoscienceを個人的に、もしくは公費にて購読すべきか否か

脳内討論会の結果

(賛)

  • 素敵なgeochemical life.
  • 「Nature Geoscienceのほうかよ!読めないよ!」というストレスからの脱却。
  • うちの大学では購読が望めない...

(否・保留)
  • むしろ、Geomicrobiology Journalなんじゃ?(しかしながら個人購読ではarchivesは読めないという不親切設定のため購読に乗り切れない)
  • もしかしたら、もしかしたら大学で購読してくれるかもしれない。

尚Natureは2年間個人購読していました。昨年やっと大学でもNature、Scienceがオンラインで読めるようになりましたよっと。

確かにGeomicrobiology J.は今最も頻繁に読みたい雑誌 (でも手に入らない雑誌) なので、Geomicrobiology J. も視野に入れつつとりあえず問題は据え置き。

研: Mathematica 9

Mathematica 9リリースに伴いアップグレード。

今回のアップグレードではGUIがパワーアップ。
Plot作成後にManipulate関数 (Mathematicaでもっと評価されるべき機能)が自動挿入されるようになったりしており、予測変換機能も搭載されたりして、ライトユーザにはより親しみやすくなったかな、という感じ。

ただ、ごりごりプログラミングするときには正直言いまして予測変換が重たい...。
それと、リストの要素指定はいつもlist[[i]]ではなくlist "Esc"+"[["+i+"]]"+"Esc"で行うのですが、最初のEscキーがうまく認識されなくなり悲しい...。

もう少し使い倒してから感想を加えようかと思います。