2013年1月25日金曜日

論: 人間に例えるならば20kmの距離電気を受け渡ししているかもしれないバクテリアさんたち

Electric currents couple spatially separated biogeochemical processes in marine sediment
Nielsen L.P. et al. (2010) Nature, 463(25) 1071-1074

Sediment reactions defy dogma
Nealson K.H. (2010) Nature, 463(25) 1033-1034



 堆積物のインキュベーションの結果から、表層より10数mm深部の硫化物の酸化と表層の酸素の還元との間で電子の授受が行われていることを提唱した研究。

 硫化物に富む海洋堆積物の表面を酸化的もしくは還元的海水で処理し、インキュベーションを行った。一ヶ月後、酸化的海水で処理した堆積物では表層での酸素の減少と10数mm深部での硫化物の減少が確認された。硫化物の酸化は状況証拠より鉄、マンガン、硝酸などによるものではなく、表層での酸素の還元と硫化物の酸化との間で電子の授受が行われて生じるものと考えられる。これは表層でのpH上昇が酸素の還元によってのみ説明可能なことからも裏付けられる。表層から酸素が拡散によって深部に供給された可能性もあるが、表層の酸素が枯渇した際には1hというタイムスケールで硫化物の増加が起こる。このタイムスケールは酸素の拡散速度では説明不可能であるため、bacterial nanowiresを介した電子の授受によるものではないかと考えられる。



 なんとも胸の熱くなる論文を読み逃していた。2010年2月かぁ、Natureの個人購読はじめる前だな、とほほ。10数mmの空間スケールでの電子の授受、というとたいしたこと無いように聞こえるかもしれませんが、人間に例えるならばその距離は20kmだそうです(!!)。その間様々なバクテリア種で構成されているであろうにも関わらず、それぞれの端と端でお互い得をするように電子を受け渡ししているなら驚愕。現象としては確かにそれらしくて興味深いのだけれど、どういうメカニズムで電子の受け渡しが可能になっているのだろう。Bacterial nanowireは異なる種間でも接続して電子を受け渡すのだろうか?これが本当なら堆積物モデリングの際に酸素を拡散のみで記述して酸化還元を見積もるやり方は間違いを生じる可能性がある。本論文の仮説を鵜呑みにすることはやや早計かと思うので、周辺について勉強して(特にbacterial nanowire)じっくり考えてみたい。



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