2013年2月2日土曜日
論: 生物地球化学的な酸化還元過程が環境中の汚染物質の動態に与える影響のレビュウ (1)
Biogeochemical redox processes and their impact on contaminant dynamics
Borch, T. et al. (2010) Environ. Sci. Technol. 44, 15-23
環境汚染の動態に影響を及ぼす重要な生物地球化学的酸化還元反応について要約する。
Major elements, minerals, and humic substances
地球上の全ての生命は酸化還元反応からエネルギーを得る。
炭素サイクルは水から与えられる電子により二酸化案蘇我固定される酸素発生型の光合成で駆動される。無酸素発生型の光合成、化学合成による炭素の合成は局所的な炭素源として重要かもしれない。有機物、その他の生物由来の還元剤(例えばパイライト, FeS2)の隔離は、風化によって酸素を消費し、地球表層の気候において地質年代学的に重要な役割を果たした。
NとPは炭素の酸化還元反応と密接に関与している。窒素は様々な酸化数をもち、酸化数の変わる反応(窒素固定や硝化)は微生物によって促進される。微生物による窒素の利用はその形態に依存し、その結果有機物の生成や循環に影響する。
パイライトの酸化と結びつく脱窒は肥料負荷の多い水域で重要な硝酸の除去過程である。しかしながら、この反応により生じた硫酸塩は微生物学的硫酸還元を促進する可能性があり、Fe(III) (hydr)oxidesを還元溶解するかもしれない。その結果、鉄にとらわれていたリンが放出し、富栄養化が引き起こされる可能性がある。
鉄は、最も地球表層において存在量の多い遷移元素として、環境生物地球化学において特に重要な役割を果たしている。酸化型の鉄は低pH環境で溶けやすく、中性pH環境で沈降する。多くの栄養塩、微量元素、汚染物質はFe(III) mineralsに吸着される。Fe(III) (hydr)oxidesの表面は多くの酸化還元反応を触媒する場となっている。
Fe(III) (hydr)oxidesは還元環境下において例えば硫酸塩によって還元され、有害なソルベートを放出する可能性がある。また、Fe(III)の好物は異化鉄還元細菌の最終電子受容体でもある。異化鉄還元細菌は水素や有機物のcytoplasmic oxidationと難溶解のFe(III)鉱物のextracellular reductionを結びつけ、電子を受け渡しするリン酸化反応を介してエネルギーを得る。Fe(III)鉱物の還元は可溶なFe(II)や、Fe(II)やFe(III)の様々な二次鉱物を生成する。Fe(II)は溶存態でも、吸着された状態でも、固相状態でも、様々な非生物学的還元において強力な還元剤としての役割を担う。
Fe(II)の酸化は好気・嫌気細菌によって触媒されるかもしれない。微生物学的Fe(II)の酸化は、化学的な酸化が起こりにくい低pH環境で一般的に見られる。中性pH環境下では、Fe(II)酸化細菌は化学的酸化と競争しなければならず、そのためoxic-anoxic境界(例えば水浸しになった土壌中における植物の根の周辺)根の低酸素下において主に生存する。Phototrophic and nitrate-dependent Fe(II)-oxidizing bacteria (光合成硝酸依存型Fe(II)酸化細菌) は中性pHで還元的な環境下で硝酸やMn(IV)の酸化物を用いてFe(II)を酸化する。
マンガン酸化物は表面積が大きく、その存在量に対して環境中の化学への寄与が大きい。マンガン酸化物は重金属や栄養塩の吸着剤となりうる。よって、天然環境中における汚染物質のシンクとしてふるまう。マンガンはセレンやクロム、ヒ素の酸化に寄与する。また、M(II)の酸化は様々なバクテリアや菌類によって触媒され、生物学的なマンガン酸化物は環境中のマンガン酸化物の主なソースであると考えられている。生物学的に生成されたMn(II)の酸化物ははじめ弱く結晶化しているが、最終的な状態は環境の状態に依存する。
水圏におけるFe(III)やMn(III, IV)鉱物表面の構造や反応性は無機の吸着剤やnatural organic matter (NOM)に影響される。フミン質はredox-activeで、微生物により還元されうる。例えば、難溶性のFe(III)酸化物と微生物の細胞の電子を受け渡しをすることで、微生物学的還元を促進する。Fe(III)とMn(IV)鉱物表面に対するNOM、リン酸塩、重炭酸塩の吸着し、汚染物質と交換して汚染物質の放出を引き起こすかもしれない。一方で、鉱物に対する微生物のアクセスを制限することで、酵素反応に対して固相を保護する役割を担っているかもしれない。フミン質はイオンとの錯生成、鉱物表面への吸着を通してFeやMn鉱物のbiomineralizationに影響し、一般的に結晶化度の低い鉱物を生成する。
(続く)
要約しようにもどこもかしこも重要なことが記述されているレビュウだったので、ざっくりと全体を訳すことにした。レビューはすぐ読めるのだけれど、日本語に訳すと割と時間がかかるなー。酸化還元な生物地球化学に興味をもってくれる人を増やすための、布教活動の一環。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿