2013年2月8日金曜日

論: 深海に棲息するエビと鉄の酸化




Biotic and abiotic controls on iron oxyhydroxide formation in the gill chamber of the hydrothermal vent shrimp Rimicaris exoculata
Schmidt, C., Corbari, L., and Le Bris, N. (2009) Geobiology 7, 454-464



概要

 深海熱水系に棲息するエビRimicaris exoculataが、脱皮サイクル期間を通し、周辺環境の二価鉄の酸化にどれくらい寄与しているのかについて調べる。実際に鉄を酸化するのはRimicaris exoculataに共生する鉄酸化細菌である。

 Rainbow hydrothermal vent siteにおいてRimicaris exoculataをサンプリングし、鰓室の酸化鉄を溶解、溶存態鉄の濃度を測定した。また、Rimicaris exoculataの生息環境も同時にモニタリングし、Rimicaris exoculataの鰓室で鉄の酸化が周辺環境より卓越するのか、また、homogenous な鉄の酸化と heterogeneous な鉄の酸化のどちらが支配的であるのか、鉄の酸化の動態モデルにより検証した。

 Rimicaris exoculataの鰓室における鉄の酸化は周辺環境で生じる酸化と比較して進行が速いことが示された。Rimicaris exoculataの周囲では酸素濃度やpHの低下し、これによって homogeneous な鉄の酸化は周辺環境より進行が遅い。しかしながら、鉄の酸化物がある程度生成されると heterogeneous な鉄の酸化が始まり、鉄の酸化速度を支配すると考えられる。

 鉄の酸化動態モデルの計算結果からは非生物学的な heterogeneous (autocatalytic) な鉄の酸化が支配的であり、鉄酸化細菌による鉄の酸化が困難であることが示唆された。しかしながら、脱皮の初期段階では局所的な酸素濃度の低下により、鉄酸化細菌による鉄の酸化が可能かもしれないと考察する。



 生物学的な鉄の酸化と非生物学的な鉄の酸化の違いについて考える日々。Schmidtらの研究はサンプリング、観測、モデリングの組み合わせで、取り組み的には非常に魅力的だと思うのだけれど、酸化鉄のモデリングはこれでいいのかしら。特に式(9)が疑問。あと、式(7)がFe(III)-O-Fe+-dependentなのも疑問。どうしてFe(III)-OHではないのかしら。元の論文読んでみる必要があるなぁ。

 Rimicaris exoculataは画像検索すると可愛いエビさんに会える。ただし、うじゃ〜〜〜っと生き物がひしめいているのが苦手な方にはちょっと辛い画像もあるのでご注意を。脱皮サイクルと酸化速度の関連は、とっても興味深い。



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