東大農学生命科学研究科土壌圏科学研究室の黒岩恵さんが11月25日(月)に共同研究打ち合わせで訪れてくれることとなり、折角なのでセミナーの依頼をしたところ快諾してくださいました。
インフォーマルなセミナーです、急なアナウンスとなりましたが、ご関心のあります方は是非お越しください。また、夜は近鉄奈良駅近くで懇親会を行う予定ですので、ご都合のよろしい方はどうぞご参加ください。
講演タイトル:「生態系機能とプレイヤーはつながるか」
講演者:黒岩恵 (東大農学生命科学研究科土壌圏科学研究室 D2)
日時:11月25日(月)
場所:奈良女子大G棟303室
要旨:
森林の生産性は一般に窒素の供給によって制限されてい ると考えられており、植物や微生物にとって主な窒素源で ある無機態窒素(アンモニウム(NH4+)および硝酸(NO3−))の 生成や消費プロセスは特に重要である。植物や微生物は一般的に土壌中で無機化によって生成する NH4+および硝化 によって生成する NO3−を利用する(図 1)。その一方で生成 した NO3−は容易に水系へと流出し、またガス態窒素へと還 元(脱窒)される (図 1;青矢印)。多量の NO3−の流出は水系の富栄養化を、また脱窒過程で放出される亜酸化窒素(N2O) や一酸化窒素(NO)は温暖化やオゾン層破壊、光化学オキシ ダント生成を引き起こす。したがってこれらの問題の低減と、健全な森林生態系の維持・ 管理のために、硝化はキーとなるプロセスであり、どのような要因によって制御されてい るのかを明らかにする必要がある(図 1)。しかし、硝化や他の窒素循環プロセスを含む土壌 中の物質変換や移動プロセスは地理的条件(気候・植生など)や地質的条件に強く影響され、 硝化の制御要因を一般化することは難しい。さらに、硝化は微生物による代謝反応であり、 硝化の制御メカニズムを明らかにする上で活性を担う微生物の生理特性を考慮する必要が ある。しかし森林土壌において、どの微生物群が硝化活性を担っているかはいまだ不明瞭 である。具体的には、硝化の第一段階である NH4+酸化は、これまで主に独立栄養性アンモ ニア酸化細菌(AOB)によって駆動されると考えられてきたが、これに加えて特に酸性森林土 壌では従属栄養細菌・糸状菌(Schimel et al. 1984 AEM)や近年発見されたアンモニア酸化 古細菌(AOA)の関与が示唆されている( Leininger et al. 2006, Nature)。また、これらの微 生物が窒素循環速度をどのように制御しているかについてはほとんど未解明であるのが現 状である。
本発表では生態系における窒素フロー測定の背景と現状、またこのような生態系の「機 能」と「プレイヤー」の関係性をどのように検証していけば良いのかについて、近年の事 例をとりあげながら、物質循環および微生物生態学の視点から考察する。
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