2013年1月30日水曜日

論: 鉄酸化物の還元溶解




Kinetics of reductive bulk dissolution of lepidocrocite, ferrihydrite, and geothite
Larsen, O., and Postma, D. (2001) Geochimica et Cosmochimica Acta, 65(9), 1367–1379



 10 mM ascorbic acid at pH 3で3つの鉄酸化物を還元溶解し、reactivityを調べ、reactivityが一体何に起因するのかをChristoffersen and Christoffersen (1976) の鉱物の溶解の式を用いて考察する。式は以下のように与えられる:


ここで、Jは全溶解速度(mol/s)、mは鉄酸化物量を、m0は鉄酸化物量の初期条件を表す。関数fgはそれぞれ鉄酸化物の残存率が溶解に与える影響、溶液の組成(主に還元剤の量)が溶解に与える影響を意味する。本研究ではf(m/m0)=(m/m0)γ, g(C)は一定とし、以下のようにおく:


 溶解速度k'は3種の鉄酸化物で大きく異なり、2-line ferrihydrite > lepidocrocite > poorly crystaline goethiteの順で速かった。多くの実験では溶解速度は表面積に依存しないという結果になったが、lepidocrociteでは表面積に対して線形に溶解速度が上昇する場合があった。これは、溶解速度に対して表面積でなく鉱物の組成が影響していることを意味する。

 γk'と同様3種の鉱物について求められた。γは様々な要因(結晶のサイズ分布、結晶の表面積、reactive siteの密度など)に影響されるが、結晶サイズの分布が還元溶解には最も影響が大きいと考えられる。



 鉄還元細菌のことをより詳しく知るため、まずは無機的な鉱物の還元と溶解の基礎について復習中。無機的な還元だけでも複雑だ。EhとpH、鉄の濃度を連続測定しながら細胞数のデータを取るとか...無理かしら...。reductive dissolutionの日本語訳は還元溶解でいいのかしら?

 今日は午前中研究室の発表練習。午後は卒論のペン入れ。わたしにも、、プログラミングと手計算をする時間をください。。



2013年1月29日火曜日

論: Chemical versus microbial extractions of Fe(III)




Reactive iron(III) in sediments: Chemical versus microbial extractions
Hyacinthe, C., Bonnevile, S., and Van Cappellen, P. (2006) Geochimica et Cosmochimica Acta, 70, 4166–4180



 富栄養化したScheldt estuary (ベルギーとオランダにまたがるスヘルデ川の河口)で堆積物を採取、化学的・微生物学的鉄の抽出について比較。化学的抽出にはascorbate-citrate (buffered at pH 7.5), ascorbic acid, 1M HClの3つで処理。リガンドもしくは酸によって促進される還元溶解か、プロトンによって促進される溶解かが異なる。微生物学的抽出ではO2の代わりにFe3+を最終電子受容体として呼吸をおこなうShewanella putrefaciensを培養。堆積物中の鉄のbioavailabilityについても評価する。

 実験の結果、サンプルより抽出された鉄の量は、全てのサンプルにおいて ascorbate < acid ascorbic < HCl で多かった。つまり、酸によって促進される溶解のほうがFe(II)や反応性の低いFe(III)を溶解させる。堆積物中に含まれていた抽出される鉄の最大量は、the reactive continum modelで実験データをフィッティングすることによって求めた。S. putrefaciensによる鉄の抽出量は中性のpH付近でcitrateの存在下でascorbateで鉄の抽出を行った場合と直線関係にあった。つまり、堆積物中のbioavailableな鉄の量を見積もる際には、同条件でascorbateによる鉄の抽出を行う方法が適している。

 しかしながら、ascorbateで還元される鉄の量のうち、S. putrefaciensによって用いられる量は65%程度であった。これは固相のFe(III)への物理的なアクセスによる制限によるものかもしれない。



 化学 vs 微生物学的な鉄の溶解実験で、bioavailableな鉄の見積もり方について検討した研究。天然環境のお仕事は魅力的に見えるけれど、わたしは圧倒的に培養実験のほうが面白いと思う!どこまでが「無機物」で説明できる現象で、どこからが「微生物」でしか説明できない現象なのか、それを突き詰めるには培養実験を繰り返すしかないのだろうな。あああ、培養とモデルを組み合わせた仕事がしたい。うずうず。

 まだ本決定ではないけれど、4月からこの論文のラストオーサーのPhilippeのグループのところで1ヶ月半ほど客員研究員として研究してくる予定。も〜〜〜、楽しみすぎて楽しみすぎて仕方がない!!!向こうに行くまでになんとか進めておきたい仕事があるけれど、今はみんなの卒論にひたすら赤を入れる日々...!!!あとも少しで提出だ、ラストスパート頑張れな!!!



2013年1月28日月曜日

論: 昔々から硫黄サイクルを回していた細菌さん達




Contributions to late Archaean sulphur cycling by life on land
Stüeken, E.E., Catling, D.C., and Buick, R. (2012) Nature Geoscience, 5, 722–725



 微生物による酸素を用いた陸上のパイライト(FeS2)の酸化は少なくとも2.5 Gyr 以前から行われており、硫黄風化フラックスの総量に対してかなりの比率を占めていたようであることを、マスバランスモデルのフラックス計算により指摘。始生代から初期原生代における海洋の硫黄の存在量データと、海洋への火山活動による硫黄供給フラックス・生物/非生物的風化の硫黄供給フラックスを考慮したマスバランスモデルを組み合わせることで、非生物的風化では硫黄の風化フラックスの総量を説明できないことについて言及。同時期に揮発性ではないモリブデンが堆積物中で増加していたことも確認されたため、説明のつかない風化フラックスの差分は微生物によるパイライトの酸化により説明できるものと結論づける。パイライトを酸化する細菌が存在したことで硫化物の海洋への供給が増え、海洋生態系に大きな影響を及んだことが予想される。もし硫化物の還元がメタンの発生を抑制したならば、大気中への酸素の供給を促進したことも考えられる。



 細かいモデリングのところにも興味があるので、SIを読まなければ。あと、同筆者の面白そうなペーパーがGeobiologyに掲載されていたので、そちらも明日読みたいな。それにしても今日は自分の研究がさっぱりできなかったので、明日は少しでも研究の時間が取れるといいな。。な〜んど言っても同じミスを続けている卒論。最初はできなくても仕方が無いが、言われても変わらないようならもう一年やり直しだぞ〜〜〜!



BBC: Will we ever... lose all of our coral reefs?




Will we ever... lose all of our coral reefs? - from BBC Future



 A third of reef-buikding corals are in danger of extinction across the world, and the reefs are in serious decline. In Caribbean sea, the proportion of the reef covered by live coral has been plummeting from 50% in the 1970s to just 8% nowadays.

 Coral reefs have been besieged with multiple anthoropogenic factors. For example, rampant overfishing declines the number of herbivorous fish that consume competitors of corals, such as seaweed and algae. Some diseases are exacerbated by bacteria carried in human sewage, and agricultural run-offs load seas with excess of nutrient, results in algae blooms.

 Climate change, especially the vast input of carbon dioxide, is considered as the most responsible one for the plunge of coral reefs. The majority of corals seem to be sensitive to the increase of temperature, In warmer water, corals expel the algae that live inside their tissues and produce nutrients by harnessing sunlight, which causes corals bleached. Meanwhile, the decline of ocean pH induced by the rise in carbon dioxide, so-called ocean acidification, inhibits corals from building their limestone fortresses.

 An ecologist remarks that there is no hope to save the global coral reef ecosystems, although many other coral scientists see less doom and gloom, and call for help from local communities.

 Corals could survive ancient dramatic climate fluctuation for several times, therefore they proved to be remarkably resilient. However, the recent upheaval of temperature is so rapid that some corals species end up with extinction.



2013年1月27日日曜日

論: 海洋酸性化と鉄のbioavailability




Effect of Ocean Acidification on Iron Availability to Marine Phytoplankton
Shi D., Xu, Y., Hopkinson, B.M., and Morel F.M.M. (2010) Science 327, 676-679



 二酸化炭素濃度上昇に伴う海洋酸性化により海水中の鉄の存在形態が変わり、植物プランクトンの成長が阻害されることがあることを実験により証明。実験対象はThalassiosira weissflogii, Thalassiosira oceanica, Phaeodactylum tricornutum, Emiliana huxleyiの4種。EDTAでバッファーした培養液中で二酸化炭素分圧を変え、定常状態時の鉄吸収速度を測定し、pHの低下に伴い鉄の吸収速度が低下していることを確認。鉄の吸収速度の低下はpHによる生理学的な影響では無く(このロジックについてはよく説明されていないように思うのだが)、鉄のspeciationの変化に起因すると結論づける。具体的には錯解離定数の変化、錯生成した鉄の酵素による還元、コロイドの溶解度、細胞壁への吸着、などがpHによる影響を被る。



 酸性化によってむしろ鉄の溶解度が上昇してbioavailableになると単純に考えていたので興味深く読む。存在形態のことはちゃんと考えないとだめだな、確かにあり得る。反省。Speciationが重要となると、有機物の存在とその錯生成も重要なファクターなのだろうな。評価が難しそうだけれど。



本: 下流志向 - 学ばない子どもたち働かない若者たち

下流志向 - 学ばない子どもたち働かない若者たち 内田樹著 (講談社文庫)



 子どもたちの学力が年々低下していることが指摘され、学力の引き上げをしなければならないという問題意識が共有される一方で、ではそもそも何故学力が低下し続けているのか?という問いに対しては我々は考えることを放棄してしまっているのではないだろうか。

 本書では子どもたちが学び、並びに若者が労働から逃走する理由を、彼らが「消費者」としての立場で教育・労働と向き合っているためと洞察する。つまり、子どもたちや若者は、教育や労働から得る報酬が、自分の「ものさし」に従い自分の支払い(努力)と等価交換でないと判断するならば、教育や労働を価値がないものと見なすように変貌してきているのではないか、という見解である。更に筆者は、彼らの「ものさし」が無時間的であるために、現在の「好き・嫌い」という刹那的な判断に基づいて自己決定を行うことに高い満足を得ていることを指摘する。そこには将来的に得る可能性のある価値は含まれない。


 非常に短い大学教育の現場での経験からではあるが、この意見は的を得ているように思う。以前、講義の最中に、ある学生から

 「この作業を行うことにどのような意味があるのですか?」

と問われたことがある。エクセルでのソートを説明する際に、結果がどうなるのかを伏せたままで表と関数の入力を指示したときの話である。

 「全ての作業が完了したときに今行っている作業の意味が理解できるから、まずはその全てを実践してみなさい」

と返答すると、その学生は非常に不本意という顔で、不快感を顕わにしながら作業に戻った。その後ソートを実行させると、何か納得していたようではあったが。

 学生達の物事への取り組みの傾向として、「結果がどうなるかわからないことはやらない」ように変わってきているのではないか、と感じる。「学習することにどんな意味があるのか?」その意味は学習をしないととわからないし、学習することで意味は変わっていく。

 もう少しかみ砕いて、わたしの解釈を含めて言うならば、学習は自らの可能性を拡張する機会だ。最近よく聞く若者の悩みの1つに

「自分が何をしたいのかわからない」

というものがあるが、何も知ろうと思わなければ、何をしたいのかわからないのは当然ではないだろうか、と思う。また、何か新しいものと出会った際に、現状の自分の「好き・嫌い」だけでそれと向き合うか否かを決定していては、自分の可能性は広がらない。

友人の言葉で好きな言葉がある。彼女の父親の言葉だそうだが、

「食べ物の好き嫌いを許さないわけではない。しかし食わず嫌いはいけない。一口でも食べて判断しろ」

というものだ。これは学問にもあてはまる。まずその分野が本当に嫌いか、自分に合わないかを知るために、本気で取り組み合ったか? その上で人には向き不向きというものがあるから、諦めが必要な場合もある。ただ、本気でそのような取り組みをしているものは少ないように思うのだ。

 「どうして勉強 (労働) しなければならないのか?」と思うのであれば、まず勉強「しない」ことのメリット、デメリットを考えてみたら良いのではないかと思う。メリットはおそらく現状の自分が楽しい気分で居られる、というところだろうか。そこに将来の自分のメリットは考慮されているだろうか? 例えば労働しないことで将来の自分がホームレスとして生きるような可能性を考慮し、そのリスクを受け入れる覚悟はあるのだろうか。そういった絶対たる信念や覚悟をもって「さぼる」ことを選んでいる人間には、まだ会ったことがない。


 とまあ、どうも私は説教臭くなるのだが、若くて時間があるうちに、あまり好き嫌いせず、なんでも一所懸命やってみろよ、というのが私の主張です。井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る? その「深さ」は何と比較して「深い」のか?

 内田樹の本は学生に勧めたい。特に、寝ながら学べる構造主義女は何を欲望するか? は、読んでみて欲しいと思う。



思: ブログのモチベーション

 さいきん(を変換すると"細菌"が一番初めに現れる我がPC)ブログをまじめに更新している。これは、「1日最低1本は論文を読む」ことをサボらないためである。疲れていたり忙しかったりすると、ついつい「明日読むか」などと思ってしまうので、毎日の更新で「サボっていない」ことを証明することを目標としてみる。要は、己に対するプレッシャー。

 良い論文を書くためには、良い論文をたくさん読むことが必要不可欠。あと、学生には論文だけでなくて、良い本をたくさん読んで欲しい。理学書に限らず。



論: Geobacteraceae in retentostats

How Geobacteraceae may dominate subsurface biodegradation: physiology of Geobacter metallireducens in slow-growth habitat-simulating retentostats

Lin, B., Westerhoff, H.V., and Röling W.F.M. (2009) Environ. Microbiol. 11(9), 2425-2433



 Geobacter metallireducensをretentostat (リテントスタット)で培養、the maximum growth yield (ここでは炭素転換効率で評価される)や細胞の維持に必要なエネルギー量などを見積もる。

 Geobacteraceaeは異化的に鉄を還元する細菌で、鉄が還元されうる還元的な環境、特に富栄養化した水圏環境でしばしば存在が確認されている。自然環境下における化学合成細菌の増殖速度は一般的に非常に遅いが、ケモスタットを用いた連続培養系では細胞の流出が生じるため高い増殖速度で培養を行う必要がある。一方リテントスタットでは細胞の流出が無いため自然環境下に近い増殖速度での培養が可能である。

 LinらはGeobacter metallireducensを0.0008h-1の増殖速度で培養。細胞の維持に必要なエネルギー量が他の従属栄養バクテリアと比較して非常に低いことを確認。また、鉄やフミン酸の代わりとなる電子受容体、2,6-anthraquinone disulfonate(AQDS)を新たなタンパク質合成を必要とせず代替として利用することを確認。これらの特徴によってGeobacteraceaeは鉄が還元されるような還元的な環境下で優勢となるのかもしれない。



 モデル計算に必要なパラメタが手に入り、感謝。実験とモデル、一緒に進められればなぁ。しっかし化学合成細菌の培養は時間がかかるものですね。。現状私のモデルでは炭素転換効率は固定にしてしまっているが、von Stockarらの研究での言及なども考慮して、thermodynmic-basedで考える必要があるかもしれない。


2013年1月25日金曜日

論: 人間に例えるならば20kmの距離電気を受け渡ししているかもしれないバクテリアさんたち

Electric currents couple spatially separated biogeochemical processes in marine sediment
Nielsen L.P. et al. (2010) Nature, 463(25) 1071-1074

Sediment reactions defy dogma
Nealson K.H. (2010) Nature, 463(25) 1033-1034



 堆積物のインキュベーションの結果から、表層より10数mm深部の硫化物の酸化と表層の酸素の還元との間で電子の授受が行われていることを提唱した研究。

 硫化物に富む海洋堆積物の表面を酸化的もしくは還元的海水で処理し、インキュベーションを行った。一ヶ月後、酸化的海水で処理した堆積物では表層での酸素の減少と10数mm深部での硫化物の減少が確認された。硫化物の酸化は状況証拠より鉄、マンガン、硝酸などによるものではなく、表層での酸素の還元と硫化物の酸化との間で電子の授受が行われて生じるものと考えられる。これは表層でのpH上昇が酸素の還元によってのみ説明可能なことからも裏付けられる。表層から酸素が拡散によって深部に供給された可能性もあるが、表層の酸素が枯渇した際には1hというタイムスケールで硫化物の増加が起こる。このタイムスケールは酸素の拡散速度では説明不可能であるため、bacterial nanowiresを介した電子の授受によるものではないかと考えられる。



 なんとも胸の熱くなる論文を読み逃していた。2010年2月かぁ、Natureの個人購読はじめる前だな、とほほ。10数mmの空間スケールでの電子の授受、というとたいしたこと無いように聞こえるかもしれませんが、人間に例えるならばその距離は20kmだそうです(!!)。その間様々なバクテリア種で構成されているであろうにも関わらず、それぞれの端と端でお互い得をするように電子を受け渡ししているなら驚愕。現象としては確かにそれらしくて興味深いのだけれど、どういうメカニズムで電子の受け渡しが可能になっているのだろう。Bacterial nanowireは異なる種間でも接続して電子を受け渡すのだろうか?これが本当なら堆積物モデリングの際に酸素を拡散のみで記述して酸化還元を見積もるやり方は間違いを生じる可能性がある。本論文の仮説を鵜呑みにすることはやや早計かと思うので、周辺について勉強して(特にbacterial nanowire)じっくり考えてみたい。



悩: 2013年度日本地球惑星科学連合大会の参加

 5月19日から24日にかけて、幕張メッセにて2013年度日本地球惑星科学連合大会が開催される。

 今年は久々に参加しようかと考えるものの、カナダ滞在の帰国翌日(予定)からの開催...うーむ。Goldschmidt 2013と日本地球化学会2013年度大会での発表もあるしなぁ。でも興味深いセッションも見受けられるので、都合がつきそうだったら参加したい。

 重要

 地球惑星連合大会の要旨投稿締切: (早期) 2月3日(日) 24:00、 (最終) 2月15日(金) 正午12:00

 Goldschmidt 2013 Abstract submission deadline: April 12 (23:59 UTC)

本: Processes in Microbial Ecology

Processes in Microbial Ecology (Kirchman, D.L.著) をKindle editionで購入。Kindle editionだと公費で買えないだろうなー、ということで自腹での出費。しかしながら既にペーパーバックも出ているのでお安く購入できました。

買ったばかりでまだ全て読み終わっていないけれど、平易に一般的なことが手広く書かれている感じ。こういう教科書が日本語であれば良いのになー。生物地球化学関連の教科書も日本語の良書は無く、未だにSchlesinger W.H. の Biogeochemistry が私のバイブル。

お目当ては主にgeomicrobiologyに関するセッション。カナダ滞在中実験の人たちと良いコラボレーションができるように、できる限り知識を増やしておきたい。

読み終えたところをメモ書きしていこうかと思います。





Chapter 13 Introduction to geomicrobiology

Cell surface charge, metal sorption, and microbial attachment

 微生物の細胞の表面は一般的に負に帯電しているため、正に荷電した元素や化合物を引き寄せ、細胞とその周囲との間に荷電の勾配を生じる。表面電荷は微生物の種、生育環境などに依存する。また、pHが低い場合には表面荷電は水素イオンによって中和される。大部分の微生物のisoelectric point (等電点)はpH2 - 4程度である。

Metal sorption

 細胞が負に帯電していること、また表面積が大きいことにより、微生物は正に荷電した金属を吸着し、反応サイトの場となっている。吸着モデルにはLangmuir式やBET吸着等温式などがある。微生物は細胞表面の官能基を変えることである程度吸着量を制御できる。それによって、金属を吸着することで細胞壁を安定させたり、金属による毒性を低減させたりすることで利益を得る。

Iron uptake mediated by siderophores and other metal ligands

 ある種の微生物は鉄の制限下においてsiderophores (シデロフォア) と呼ばれるリガンド (もしくはキレート)を細胞外に放出する。siderophoresと鉄と錯生成することでFe(III)は溶存態として存在し、沈降が防がれる。多くのsiderophoresはバクテリアによって合成されており、大きく分けてhydroxamates, catecholates, alpha-hydroxycarboxylatesの3つに分類される。Siderophoresを合成しない細菌もsiderophore-iron complex (錯体) を利用することが確認されているので、siderophoresを合成する細菌は"ただ乗り"されているが、siderophoresを合成するメリットがただ乗りのデメリットを上回るようである。

 鉄の他にも銅やビタミンを得るためにリガンドを放出するものの存在も確認されている。




2013年1月24日木曜日

詣: 檜原神社, 狭井神社, 大神神社

 今月の三連休中に友人達が奈良に遊びに来ており、檜原(ひばら)神社, 狭井(さい)神社, 大神(おおみわ)神社を観光しました。奈良の神社と言えば春日大社が有名ですが、大神神社の歴史は春日大社よりも古く、最古の神社の一つと言われています。三輪山をご神体とし、祭神は大物主大神とされています。大物主大神は出雲系で国譲りを迫られた大国主命の別称であり、和魂(にぎみたま)とされていますが、大神神社の大物主大神は大国主命とは独立した神であったとする説もあるようです。


写真は檜原神社から狭井神社までの途中


 狭井神社からは三輪山への登拝が可能です。今回は時間が無くて断念致しました。檜原神社から大神神社までは他にも様々な神社が奉られており、また、近くには有名な古墳も点在します。半日ほど時間をとってのんびり散策するのがお勧めです。


貴船神社。見目麗しく、参拝後に謹んで撮影させていただきました。


 三輪は三輪そうめんでも有名。お越しの際には是非ご賞味あれ。



歴史のある神社は風格があって圧倒されます。今年は是非とも島根・鳥取に赴き、神社巡りをしたい...!妖怪も大好きなので、鳥取は憧れの地。

論: Energy-based modelsのレビュー

Energy-based models for environmental biotechnology
Rodríguez J. et al. (2008) Trends in Biotechnology 26(7) 366-374


Environmental biotechnology is evolving

 廃棄物からのエネルギー回収などのために微生物学的処理が試みられているが、mixed-cltureでは期待していたような結果が得られないことが往々にある。これは物理化学的な環境のわずかな変化や微生物間の競争の結果に依存すると考えらる。このような複雑な相互作用を理解するために数理モデルが役立つ。


Are existing models adequate? 

 数理モデル研究はMass-balance based modelsとして発展し、現在はkinetic-based-modelsに拡張される。しかし、kinetic-based-modelsには以下のような問題点が挙げられる:


  1. 微生物と化学反応の動態を別々に扱う。
  2. 微生物間の競争は無視される。
  3. エネルギー的、熱力学的な制限をしばしば無視する。


What would a suitable model look like?

 Mixed-cultureにおける基質や生成物のフラックスを定量的に評価する数理モデルはその微生物群衆内で生じる反応に関する代謝のstoichiometryとkineticsを考慮しなければならない。現象を説明するために重要な項目を含み、考慮するプロセスは最小化されなければならない。


Including thermodynamics

 質量保存の法則に加え、熱力学的な制限も考慮されるべきであり、熱力学的な側面を考慮したモデルも存在する (これをenergetic modelsと総称して良いのだろうか?)しかしながら熱力学的な制限を加えただけでkinetic-based-modelsは現象をうまく説明できない。これはエネルギー収率を一定と仮定していたり、微生物間の相互作用を考慮しないことに起因する。


An energetic framework

 "Gibbs energy calculations allow the identification of the energy niches that are needed for redox reactions to occur."

 Energetic nichesと微生物活動の関係はまだ明らかにはされていないが、energetic modelsからは重要な情報が与えられる。例えば、ある特定の生成物を得るための特定の反応を伴うプロセスの開発に役立つ。


A metabolic network modelling approach based on energy

 環境要因は微生物が反応から得るエネルギー量に影響する。特に興味が持たれるのはどのような条件の際にエネルギー収量が最大化するかである。また、得られるエネルギー量を最大化するために選択圧がかかると考えられる。このため、進化学的な側面もモデルで考慮する必要があるのかもしれない。





 完全な要約ではなく、興味がある部分の抜き出し。化学合成細菌の動態の数理モデルはまだまだやることがありそうだ。燃える!




2013年1月23日水曜日

BBC: Is that our dream life?

Will we ever... photosynthesise like plants?

 Increase demand for food production is one of the greatest issues for the sustainable development of humanities. Instead of consuming food, is it possible to feed us with alternative energy: light?

 According to this article, there are a few exceptional evidences that not only plants but also animals, such as pea aphid and Oriental hornet, are capable of photosynthesis. Besides, some non-photosynthetic organisms form a partnership with photosynthetic organisms, which provide their partners with energy.

  So, it sounds not 100% impossible for us to acquire photosynthetic ability, only if we abandon the way we live and begin to live like plants. Generally speaking, animals need more energy than plants, due to, e.g., physical movements or the maintenance of body temperature. In order to gain sufficient energy to maintain our metabolism, we need to enlarge the surface area to its volume and always stand still.



 If humanities were capable of photosynthesise, the food shortage problem would be completely solved and we might live happier, feeling safe and secure. However, we would lose our greatest joy to enjoy delicacies.

論: 窒素の種・群衆・生態学的閾値な話

Impact of nitrogen deposition at the species level
Payne, R.J. et al. (2003) PNAS 110(3) 984-987

 ヨーロッパの酸性質の草原地帯を対象にメタデータ解析を行ったところ、窒素負荷量に対して統計学的に有意な種多様性の損失が確認された。

 ある種の存在量が統計学的に変化する窒素負荷量 (critical-point) の約60%が現行の閾値レベルを下回っており、また、最低レベルの窒素負荷量においても感受性が高い種に影響が及ぶ可能性があることが示唆された。

 群衆レベルでは14.2 kg N ha-1yr-1がロバストな閾値のようであり、これ以上の窒素負荷を被る場所では、窒素負荷に対し耐性がある群衆構造に既に変遷していると考えられる。よって、窒素に対し感受性が高い種を保全するためには少量の新たな負荷であっても避けるべきである。




 これだけの結果が出るデータがそろっているのが素晴ら羨ましい。定量的な閾値の導出のためにはボトムアップなモデリングよりも統計モデルのほうが威力があるなぁ。

2013年1月21日月曜日

悩:Nature Geoscienceを個人的に、もしくは公費にて購読すべきか否か

脳内討論会の結果

(賛)

  • 素敵なgeochemical life.
  • 「Nature Geoscienceのほうかよ!読めないよ!」というストレスからの脱却。
  • うちの大学では購読が望めない...

(否・保留)
  • むしろ、Geomicrobiology Journalなんじゃ?(しかしながら個人購読ではarchivesは読めないという不親切設定のため購読に乗り切れない)
  • もしかしたら、もしかしたら大学で購読してくれるかもしれない。

尚Natureは2年間個人購読していました。昨年やっと大学でもNature、Scienceがオンラインで読めるようになりましたよっと。

確かにGeomicrobiology J.は今最も頻繁に読みたい雑誌 (でも手に入らない雑誌) なので、Geomicrobiology J. も視野に入れつつとりあえず問題は据え置き。

研: Mathematica 9

Mathematica 9リリースに伴いアップグレード。

今回のアップグレードではGUIがパワーアップ。
Plot作成後にManipulate関数 (Mathematicaでもっと評価されるべき機能)が自動挿入されるようになったりしており、予測変換機能も搭載されたりして、ライトユーザにはより親しみやすくなったかな、という感じ。

ただ、ごりごりプログラミングするときには正直言いまして予測変換が重たい...。
それと、リストの要素指定はいつもlist[[i]]ではなくlist "Esc"+"[["+i+"]]"+"Esc"で行うのですが、最初のEscキーがうまく認識されなくなり悲しい...。

もう少し使い倒してから感想を加えようかと思います。