2013年2月28日木曜日
論: バクテリアマットにおける鉄酸化の培養実験
Control of ferrous iron oxidation within circumneutral microbial iron mats by cellular activity and autocatalysis
Rentz, J.A., Kraiya, C., Luther III, G.W., and Emerson, D. (2007) Environ. Sci. Technol., 41, 6084-6089
概要
2箇所のサンプリングサイトで、10月と12月に採取されたバクテリアマットを培養し、環境中における微生物学的な鉄の酸化速度を見積もる。特に、バクテリアの細胞による(能動的な)酸化速度と、自己触媒的な酸化速度(バクテリアの細胞表層における受動的な酸化も含む)、バクテリアマットの組成が酸化速度に与える影響に着目する。
酸化速度はサンプリングサイトの違い、採取の時期によって1オーダーほど異なる結果となった。鉄の酸化は二価鉄の量によって決定されていた。アジ化ナトリウム処理をした培養槽においても、バクテリアの活性がある場合と同オーダーの鉄酸化速度が観察された。これは、バクテリアが生成した鉄の酸化物による自己触媒的な鉄の酸化が重要であることを意味する。このため、鉄酸化細菌は自らが生成した鉄の酸化物と競合関係にあるのかもしれない。
鉄酸化細菌によって生成される鉄の酸化物がbyproductsと表現されているけれど、byproductsなのかしら?単にproductsのような。
4月6日から5月後半にかけてカナダのWaterloo Universityというところに短期滞在してくることになりました。2012年のInternational Society for Environmental Biogeochemistry (ISEB) の学会にて知り合った教授のところにご厄介になります。あれから半年、日本に帰国してからは、ISEBの時に感じた昂揚を胸に、バクテリアのことばかりを考えて研究生活を過ごしてまいりました (卒論指導時期を除く) 。
鉄酸化・還元細菌の個体群動態と進化に関するモデル研究を中心に、化学合成細菌群衆に関連する共同研究を推進する予定です。向こうのラボでは実験も観測もモデルもやっているのですのよ!!(言葉では言い尽くせない興奮)
2013年2月26日火曜日
研: 下田臨海実験センター訪問
2月20日から22日にかけて、筑波大学下田臨海実験センターを訪問しました。
共同研究者との海洋酸性化関連の研究打ち合わせがメインの目的でしたが、プランクトンネットの実習にも参加させてもらえました。
プランクトン、とったどー!!
沿岸・沖合にてメッシュサイズの異なるネットでプランクトンを捕らえ、
その違いを調べる実習でした。
沿岸・沖合にてメッシュサイズの異なるネットでプランクトンを捕らえ、
その違いを調べる実習でした。
作業工程について、丁寧に指導していただきました。
研究室に戻ってから顕微鏡観察にも混ぜていただきました。
普段数字や記号やプログラムしか眺めることがないので、それはもう楽しいっ。
主に見られたのは珪藻、渦鞭毛藻、カイアシ類でした。加えてゴカイの幼生など。
動物プランクトンが想像していたよりはしこかったです。
下田臨海実験センターでは、現在海の生物のデータベース化に取り組んでいらっしゃるとのことで、顕微鏡画像の撮影をされていました。
そのうち公開されることと思いますので、こちらも楽しみです。
そうそう、下田臨海実験センターでは蛇口の中には、ひねると海水が出てくるものがあるのですよっ!!
海洋の研究者には理想的な実験施設だろうな〜。
2013年2月9日土曜日
詣: 滋賀の多賀大社と建部大社
しばらく前のことになりますが、滋賀の多賀大社と建部大社を参拝して参りました。多賀大社のご祭神は伊邪那岐命(イザナギ)と伊邪那美命(イザナミ)、建部大社のご祭神は倭建命(ヤマトタケルノミコト)です。
はじめての近江鉄道。多賀大社前行きは魅惑の1両編成!
多賀大社前で降車すると、立派な鳥居で此方と彼方の線引き。
数分参道を歩くと多賀大社に到着。
多賀大社は想像していたよりもこぢんまりとした佇まいでした。
色とりどりのおみくじが結ばれていました。
おみくじの色のバリエーションが豊富というのはあまり目にしないような。
まるで寒の内に咲いた花のよう。
お参り後に「糸切餅」をいただいてきました。
蒙古襲来に際し、蒙古軍の旗印(3本の糸)を「切る」ことで
勝利を祈願したそうです。
その後彦根城を見学してから建部大社にお参りに行こうと思いましたが...
楽座さんという素敵な和食屋を見つけてしまい
真っ昼間から濁りをいただくうちに、日本酒談義に。
喜楽長の「六方」という、あまり出回らない日本酒があるということをお聞きし、
いつか飲んでみたいなー、と思っていたところ...
「ありますよ、六方(にやり)」
た、頼むしかないじゃないですか!
また、酒器も素敵!!!
六方、本当に美味しかった...!
最初は奥行きのある、果実味のようなさらさらとした甘み、
それがどっしりとした日本酒の旨味となって、
酸も感じさせつつ最後はしっかり辛口。
こりゃーワインにはない美味しさ。世界に誇りたい、日本酒!!
そうこうしていたらすっかり陽も傾きはじめてきてしまったので
急遽建部大社へ移動。
倭建命(ヤマトタケルノミコト)をお祭りする神社をお参りするのは
古事記の面白さに取り憑かれてから初めて。
今後も各地の神社をお参りしたいです。
今後も各地の神社をお参りしたいです。
街中に、そこだけ浮島のように静けさを醸し出す境内でした。
彦根城は結局遠くから眺めただけに終わってしまったので、
是非また近いうちに滋賀に遊びに行きたいです。
次は近江八幡も訪れたい!
2013年2月8日金曜日
論: 深海に棲息するエビと鉄の酸化
Biotic and abiotic controls on iron oxyhydroxide formation in the gill chamber of the hydrothermal vent shrimp Rimicaris exoculata
Schmidt, C., Corbari, L., and Le Bris, N. (2009) Geobiology 7, 454-464
概要
深海熱水系に棲息するエビRimicaris exoculataが、脱皮サイクル期間を通し、周辺環境の二価鉄の酸化にどれくらい寄与しているのかについて調べる。実際に鉄を酸化するのはRimicaris exoculataに共生する鉄酸化細菌である。
Rainbow hydrothermal vent siteにおいてRimicaris exoculataをサンプリングし、鰓室の酸化鉄を溶解、溶存態鉄の濃度を測定した。また、Rimicaris exoculataの生息環境も同時にモニタリングし、Rimicaris exoculataの鰓室で鉄の酸化が周辺環境より卓越するのか、また、homogenous な鉄の酸化と heterogeneous な鉄の酸化のどちらが支配的であるのか、鉄の酸化の動態モデルにより検証した。
Rimicaris exoculataの鰓室における鉄の酸化は周辺環境で生じる酸化と比較して進行が速いことが示された。Rimicaris exoculataの周囲では酸素濃度やpHの低下し、これによって homogeneous な鉄の酸化は周辺環境より進行が遅い。しかしながら、鉄の酸化物がある程度生成されると heterogeneous な鉄の酸化が始まり、鉄の酸化速度を支配すると考えられる。
鉄の酸化動態モデルの計算結果からは非生物学的な heterogeneous (autocatalytic) な鉄の酸化が支配的であり、鉄酸化細菌による鉄の酸化が困難であることが示唆された。しかしながら、脱皮の初期段階では局所的な酸素濃度の低下により、鉄酸化細菌による鉄の酸化が可能かもしれないと考察する。
生物学的な鉄の酸化と非生物学的な鉄の酸化の違いについて考える日々。Schmidtらの研究はサンプリング、観測、モデリングの組み合わせで、取り組み的には非常に魅力的だと思うのだけれど、酸化鉄のモデリングはこれでいいのかしら。特に式(9)が疑問。あと、式(7)がFe(III)-O-Fe+-dependentなのも疑問。どうしてFe(III)-OHではないのかしら。元の論文読んでみる必要があるなぁ。
Rimicaris exoculataは画像検索すると可愛いエビさんに会える。ただし、うじゃ〜〜〜っと生き物がひしめいているのが苦手な方にはちょっと辛い画像もあるのでご注意を。脱皮サイクルと酸化速度の関連は、とっても興味深い。
2013年2月5日火曜日
論: 非生物学的な鉄酸化物と生物学的な鉄酸化物の違い
Bacillus subtilis bacteria hinder the oxidation and hydrolysis of Fe2+ ions
Fakih, M. et al. (2008) Environ. Sci. Technol., 42, 3194-3200
バクテリアは鉄の二次鉱物の生成と密接に関係していることが認識されている。その一方で、微生物学的に生成されたFe(III)の沈殿物が、非生物学的に生成されたFe(III)の沈殿物と比較して、その組成や、反応速度論においてどのような違いがあるかについては不明な点が多い。Fakih et al. は実験微生物としてBacillus subtilisを対象とし、中性環境環境下で様々なFe2+濃度条件における培養を行い、SEMとXRDによって沈殿物の特徴について調べた。また、水素生成速度やレドックスポテンシャルの動態についても観測した。
非生物的な酸化と微生物学的な酸化を比較した結果、H+の減少に対する鉄酸化物の生成量が化学量論的に異なることが明らかになった。これは、微生物学的な鉄の酸化においてoxidation/hydrolysisが不完全であることを意味する。また、SEMによる観察でも、非生物的な酸化と微生物学的な酸化によって生成した沈殿物に違いが見られた。また、バクテリアの菌密度も鉄の沈殿物の組成に影響を与えることが明らかになった。中程度の菌密度では結晶化度の低い粒子が生成されたのに対し、菌密度が高いときには鉄酸化物の粒子の生成が完全に阻害された。反応速度論的な影響としては、非生物学的な酸化の際には強いautocatalytic effect (自己触媒反応)の傾向が観察されたが、微生物学的な酸化の場合はautocatalytic effectが現れるまでより時間がかかり、また、その程度も非生物的な場合と比べて小さかった。これは、バクテリアのreactive sitesとFe2+が錯生成することによって、酸化や加水分解速度に影響が及んだからかもしれない。
Vollarth et al. (2012)の論文の引用文献巡り中。気がつけば再び鉄に関わりのある研究に(学生の頃とは全く異なるアプローチで)携わることになりそうです。今日は久々に研究の時間が取れたので、Mathematicaにてモデリング。微生物学者や地球化学者に直感的に理解しやすい可視化を目指していますが、Manipulate関数は本当に良い!!
関係ないですが、今日は立春並びに東風解凍。寒さもやや緩んできた...と思いきや、明日は大雪...?
論: 生物地球化学的な酸化還元過程が環境中の汚染物質の動態に与える影響のレビュウ (2)
Biogeochemical redox processes and their impact on contaminant dynamics
Borch, T. et al. (2010) Environ. Sci. Technol. 44, 15-23
この記事より続き。
Impact on Trace Elements
Trace Metals
様々な人間活動により微量元素がredox-dynamicな環境中に負荷されている。Cr, Cu, Co, Ag, Tc, Hgなどの微量金属は複数の価数をもつ。これらの金属はFe2+やH2によって還元される。一方で、微生物は異化呼吸もしくは解毒的な経路で、様々な、かなり毒性の高い金属でさえも、直接で気に還元しうる。微量金属の還元はCr(VI)からCr(III)への還元のように可動性を減らす場合もあれば、Hg(II)からHg(0)への還元のように可動性を上昇する場合もある。
微生物夜呼吸は金属と結合する natural organic matter (NOM) の固相-液層分別、吸着や沈殿平衡を介して、間接的に微量金属の化学種分別に影響する。微生物学的Co(III)-やNi(II)を含むgoethiteで報告されているように、微生物学的な酸化物の還元は吸着能を失わせる。また、放出されたFe2+は鉱物や有機物への吸着において、他の正に荷電した微量金属と競合するかもしれない。そのような可動性の上昇は、微量金属の吸着や共沈によって相殺されるかもしれない。
微生物学的硫酸還元は chalcophile metals (親銅金属) の沈殿を促進するかもしれない。硫黄が豊富な堆積物中では、微量金属は硫化鉄と共陳しているか、異なった硫化金属を形成する。しかしながら重金属に汚染された淡水の湿地では親銅金属のavailabilityはしばしばそれらを還元する硫化物の量を超え、微量金属の動態は生物由来の硫化物との競争的な沈殿に強く影響される可能性がある。難溶性の硫化金属の沈殿とは対照的に、硫化金属クラスターの生成は、還元環境において金属の移動性をかなり促進するかもしれない。これは、酸化環境下においても反応速度論的な安定性(この場合は移動しやすいこと?)が維持される可能性があるためである。
生物地球化学的酸化はO2が還元環境下にもたらされることよって駆動される。中性、アルカリ性pH環境下ではO2によるFe(II)の酸化が非生物学的に急激に進行するが、多くの過程は化学栄養細菌によってゆっくりと進行する。Fe-, Mn-, Al- (hydr)oxidesの沈殿は溶存態の微量金属を効果的に捕らえる。もし沈殿がナノ粒子やコロイドであれば、それらは水圏での微量金属の移動性を大いに促進する可能性がある。
Metalloids
生物地球化学的レドックス反応過程はAsやSbのようなmetalloids (メタロイド元素)の環境中での運命に強く影響する。Asが飲料水の汚染で世界的な注目を集める一方、Sbによる汚染は局所的に重大である。Sbの価数、Fe (hydr)oxidesへの吸着はSbの毒性や移動性を支配する。
バングラディシュにおける井戸掘削は浅層水圏の水文学的・生物地球化学的変化を引き起こし、ヒ素の地下水への混入に寄与した可能性があるが、その正確なメカニズムについてはまだ明らかではない。Asの移動性、bioavailabiliy、毒性、環境中での運命は、Asのキャリアの破壊、酸化還元状態やAsの化学種分別の変化などの、生物地球化学的な変化に支配される。地下水中の溶存態のAsの濃度は難溶性のiron (hydr)oxidesと密接に関係している。これは、iron (hydr)oxidesがAs(III)とAs(V)の両方を強く吸着するためである。還元的な地下水で溶存態のAsとFe(II)が高い濃度で観測されるのは、AsリッチなFe(III) (hydr)oxidesの還元が地質由来のAsの移動性に影響しているためである。
最後まで終わらせたかったけど時間がなかったのでここまで。
2013年2月4日月曜日
研+α: 卒研発表終了
2月3日(日)に卒業研究発表会が終了致しました。
今回は初めて自分の学生が発表することとなり、わたしもドキドキ...。
情報科の、特に自然情報系の教員の皆様におかれましては、学生への活発な質問・コメントをいただき、誠にありがとうございました。Oちゃんが「○○先生に研究面白かったって言ってもらえました!」とニコニコ顔で伝えに来てくれたのが印象的でした。研究の楽しさを卒研発表会を通して伝えていただき、感謝です。
卒研発表のお昼休みは、これまでのストレス発散にと節分を敢行!
学生の名誉のため、鬼役をかってでたのは自らです。念のため。
学生の写真の掲載は若干憚られるものがあるので控えますが、皆で元気に豆まきしました。豆まきに、文字通り全力投球する女子大生。粋!!
海苔が上あごに貼り付いて苦しかった恵方巻き。。
今後、豆まきは瀬戸研卒業のための必修単位にしようかと思います。卒論提出まであともう少し。頑張ろう!
2013年2月2日土曜日
論: 生物地球化学的な酸化還元過程が環境中の汚染物質の動態に与える影響のレビュウ (1)
Biogeochemical redox processes and their impact on contaminant dynamics
Borch, T. et al. (2010) Environ. Sci. Technol. 44, 15-23
環境汚染の動態に影響を及ぼす重要な生物地球化学的酸化還元反応について要約する。
Major elements, minerals, and humic substances
地球上の全ての生命は酸化還元反応からエネルギーを得る。
炭素サイクルは水から与えられる電子により二酸化案蘇我固定される酸素発生型の光合成で駆動される。無酸素発生型の光合成、化学合成による炭素の合成は局所的な炭素源として重要かもしれない。有機物、その他の生物由来の還元剤(例えばパイライト, FeS2)の隔離は、風化によって酸素を消費し、地球表層の気候において地質年代学的に重要な役割を果たした。
NとPは炭素の酸化還元反応と密接に関与している。窒素は様々な酸化数をもち、酸化数の変わる反応(窒素固定や硝化)は微生物によって促進される。微生物による窒素の利用はその形態に依存し、その結果有機物の生成や循環に影響する。
パイライトの酸化と結びつく脱窒は肥料負荷の多い水域で重要な硝酸の除去過程である。しかしながら、この反応により生じた硫酸塩は微生物学的硫酸還元を促進する可能性があり、Fe(III) (hydr)oxidesを還元溶解するかもしれない。その結果、鉄にとらわれていたリンが放出し、富栄養化が引き起こされる可能性がある。
鉄は、最も地球表層において存在量の多い遷移元素として、環境生物地球化学において特に重要な役割を果たしている。酸化型の鉄は低pH環境で溶けやすく、中性pH環境で沈降する。多くの栄養塩、微量元素、汚染物質はFe(III) mineralsに吸着される。Fe(III) (hydr)oxidesの表面は多くの酸化還元反応を触媒する場となっている。
Fe(III) (hydr)oxidesは還元環境下において例えば硫酸塩によって還元され、有害なソルベートを放出する可能性がある。また、Fe(III)の好物は異化鉄還元細菌の最終電子受容体でもある。異化鉄還元細菌は水素や有機物のcytoplasmic oxidationと難溶解のFe(III)鉱物のextracellular reductionを結びつけ、電子を受け渡しするリン酸化反応を介してエネルギーを得る。Fe(III)鉱物の還元は可溶なFe(II)や、Fe(II)やFe(III)の様々な二次鉱物を生成する。Fe(II)は溶存態でも、吸着された状態でも、固相状態でも、様々な非生物学的還元において強力な還元剤としての役割を担う。
Fe(II)の酸化は好気・嫌気細菌によって触媒されるかもしれない。微生物学的Fe(II)の酸化は、化学的な酸化が起こりにくい低pH環境で一般的に見られる。中性pH環境下では、Fe(II)酸化細菌は化学的酸化と競争しなければならず、そのためoxic-anoxic境界(例えば水浸しになった土壌中における植物の根の周辺)根の低酸素下において主に生存する。Phototrophic and nitrate-dependent Fe(II)-oxidizing bacteria (光合成硝酸依存型Fe(II)酸化細菌) は中性pHで還元的な環境下で硝酸やMn(IV)の酸化物を用いてFe(II)を酸化する。
マンガン酸化物は表面積が大きく、その存在量に対して環境中の化学への寄与が大きい。マンガン酸化物は重金属や栄養塩の吸着剤となりうる。よって、天然環境中における汚染物質のシンクとしてふるまう。マンガンはセレンやクロム、ヒ素の酸化に寄与する。また、M(II)の酸化は様々なバクテリアや菌類によって触媒され、生物学的なマンガン酸化物は環境中のマンガン酸化物の主なソースであると考えられている。生物学的に生成されたMn(II)の酸化物ははじめ弱く結晶化しているが、最終的な状態は環境の状態に依存する。
水圏におけるFe(III)やMn(III, IV)鉱物表面の構造や反応性は無機の吸着剤やnatural organic matter (NOM)に影響される。フミン質はredox-activeで、微生物により還元されうる。例えば、難溶性のFe(III)酸化物と微生物の細胞の電子を受け渡しをすることで、微生物学的還元を促進する。Fe(III)とMn(IV)鉱物表面に対するNOM、リン酸塩、重炭酸塩の吸着し、汚染物質と交換して汚染物質の放出を引き起こすかもしれない。一方で、鉱物に対する微生物のアクセスを制限することで、酵素反応に対して固相を保護する役割を担っているかもしれない。フミン質はイオンとの錯生成、鉱物表面への吸着を通してFeやMn鉱物のbiomineralizationに影響し、一般的に結晶化度の低い鉱物を生成する。
(続く)
要約しようにもどこもかしこも重要なことが記述されているレビュウだったので、ざっくりと全体を訳すことにした。レビューはすぐ読めるのだけれど、日本語に訳すと割と時間がかかるなー。酸化還元な生物地球化学に興味をもってくれる人を増やすための、布教活動の一環。
研: 卒論発表
2月3日(日)に理学部情報科学科卒業発表会がG302室にて開催されます。
当研究室の学生が4人発表します。彼女達は私が奈良女で初めて指導した学生です。
なっちょらんところも多々ありますが、もしお時間ありましたらお越しの上、ご指導の程どうぞよろしくお願い致します。
塚田 萌 | 放射性セシウム-137を対象とした食品安全性検査方法の検討 |
小田 安希子 | 人の土地利用がミツバチならびに植物の多様性に与える影響の解明 |
原 千尋 | 深海熱水系の化学合成細菌の動態のモデル化 |
松尾 玲奈 | 二酸化炭素濃度上昇に対する植物プランクトンによるpH 緩衝効果 |
尚、当日は節分ですので、豆まきを企画しております。こちらへの参加も歓迎です。
2013年2月1日金曜日
論: 低酸素条件下での鉄酸化細菌
Oxygen dependency of Neutrophilic Fe(II) oxidation by Leptothrix differs from abiotic reaction
Vollrath, S., Behrends, T., and Van Cappellen, P. (2012) Geomicrobiology J. 29, 550-560
pH中性の環境下でFe(II)を酸化する鉄酸化細菌が様々な環境中に存在していることが明らかになっている。しかしながら、pH中性の環境下では無機的な反応が進行しやすいため、無機的な反応と微生物学的な反応が競合することが予測される。これらの鉄酸化細菌は酸素濃度が低いところで卓越する傾向にあり、そのような環境下で無機的な鉄の酸化より効率的に鉄を酸化するかもしれない。この仮説を、Leptothrix chlodnii Appelsの培養実験より検証する。
無機的・微生物学的鉄の酸化の両方において、鉄の酸化の時間動態に2つの異なる特徴をもつフェーズが現れた。また、鉄酸化物による鉄酸化の促進が見られた。
酸素濃度に対する鉄酸化速度の応答は、微生物学的鉄酸化ではミカエリスメンテン型の応答が観察された。一方、無機的鉄酸化では線形の応答が観察された。
時間が経つにつれて微生物学的な鉄の酸化量が無機的な鉄の酸化量を下回る。この原因として、細胞の表面における鉄酸化物の吸着、もしくはextracellular polymetric substances (EPS)による阻害効果が考えられる。
なんともまあ素敵なデータ満載の論文...!鉄酸化細菌の適応戦略の側面から面白いモデルの研究ができるかなと思っています。カナダに行く前の宿題。結果は...今後発表するであろう論文で!!
本: 古事記 増補新版 (梅原猛)
古事記 増補版 梅原猛 (著)
近年、古事記の面白さを再認識し、各地方の神社を訪れる際に、事前にその神社の祭神にまつわる話を読み直しています。
古事記は最古の歴史書です。それとともに、日本の宗教史を伝えるものでもあり、文学でもあります。
わたしはといえば、古代史として古事記を読み解くことに興味がありますが、なかなかそんな時間もとれないので、文学として古事記を読むのが好きです。特に原文で読む古事記の躍動感ははかばかしい。
例えば、速須佐之男命が高天原に上ってくるときの天照大御神の描写。心揺さぶられます。
沫雪如す 蹶ゑ散して、いつの男建、踏み建びて待ち問ひたまひしく、「何故とかも上り来ませる」ととひたまひき。
(訳) 沫雪のように庭土を踏み蹴散らし、勇ましく雄叫びをあげ、「何故高天の原に上って来たのか」と問いただした。
原文と口語でこうも文章から与えられる景色が違うものか!!!原文の奥行きや神々しさに、口語が敵うわけがなく。どうにも原文がかーーーーっこええので、毎度苦労しながら原文を読んでいます。
先日、Amazon kindleストアにて、梅原猛さんの古事記が販売されていたので、うっかりとポチって購入してしまいました。古事記訳文が読みたかったわけではなく、梅原さんの「古事記論」が目当てでした。大変興味深く拝読。
例えば古事記とアイヌ語の共通点(チハヤフルの語源とか、漫画「ちはやふる」ファンには胸が熱くなるでよ!)、稗田阿礼=藤原不比等による歴史改変説、古事記原作者柿本人麿説などなど...。ますますと古代史研究に興味がわいてしまうのでした。時間が無限にあればいいのにっっっ!!!
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