Geomicrobiology Journalに論文が受理されました!
タイトルは"The Gibbs free energy threshold for the invasion of a microbial population under kinetic constraints"です。
環境中における化学合成細菌の存在は、その細菌が代謝を依存する酸化還元反応の反応ギブス自由エネルギーによって予測されてきました。この予測は、酸化還元反応の負の反応ギブス自由エネルギー(-ΔrG)は細菌が得うるエネルギー量であるとの仮定に基づいており、-ΔrGの値が細胞を維持するのに必要なエネルギー量を上回る時に細菌は環境中に存在可能であると考えられています。しかしながら、細菌の得られるエネルギー量は細菌がどれくらい酸化還元反応を触媒できるか、つまりは電子供与体や受容体の量に依存しています。このため、細菌の触媒速度が利用可能な電子供与体や受容体の量によって制限されるときの細菌のエネルギー収量は-ΔrGで予測されるエネルギー量よりも低い可能性があります。
本研究ではある酸化還元反応に代謝を依存する化学合成細菌が増殖可能なΔrGを、反応速度論と熱力学的エネルギーに基づいて計算される細菌の増殖率から推定しました。細菌がある系に侵入した際に増殖率が0以上になる条件をグラフを用いて視覚的に調べる方法と、モンテカルロシミュレーションによって調べる方法を提案しています。また、この方法を鉄酸化細菌個体群に適用し、鉄酸化細菌個体群が系に侵入可能であるΔrGを数値的に計算した例を紹介しています。
この論文は私が単著で執筆したものですが、様々な方との議論を経て完成致しました。特に査読者のうちの1人からは本当に丁寧なコメントをいただきました(コメントに論文リストつき!)。理論系ではない雑誌にこの論文が掲載されることとなり、大変嬉しく感じております。Geomicrobiologistsとどんどん繋がっていけるとよいなぁ。目に見えない小さなもの達が地球の物質循環を駆動するエンジン!(Falkowski et al. (2008) Scienceのタイトルより)本当に面白い!!